スイス連邦最高裁判所:Lindt社のチョコレート「金色のうさぎ」の立体形状に基づく商標権侵害を認める

[Newsletter vol. 162]

スイス連邦最高裁判所は、2022年8月30日、Lindt社(リンツ)の差止請求の訴えを認め、Lidl(リドル)に対し、リンツの金色のウサギ(Lindt Gold Bunny)をコピーしたチョコレートの製造及び販売の中止を命じる判断を下しました。 [Case: 4A_587/2021]

リンツは、2018年、白と黒で描かれた金色のウサギチョコレートの立体商標に基づき、アールガウ州商業裁判所(Commercial Court of the Canton of Aargau)に差止請求訴訟を申立て、リドルに対し、金色又は異なる色の個別包装紙に包まれた、似通った形のウサギのチョコレートの広告、販売の申し出、及び販売を中止するよう申し入れました。しかしながら、2021年、商業裁判所はリンツの訴えを退ける判断を下したため、リンツはこれを不服として控訴しました。


スイス連邦最高裁は、リンツが行った同社の金色のウサギ(Lindt Gold Bunny)の立体形状に関する認知度調査の結果を評価し、色の有無に拘らず、相当の使用実績によって、「Lindt Gold Bunny」の形状自体、出所機能を発揮している、と判断しました。さらに、多くの需要者が、当該立体形状の出所がリンツだと認識していることにも言及し、これらの事情を考慮すると、「Lindt Gold Bunny」の形状に係る立体商標には、より広い範囲の保護が認められるべきだとして、リドルに対し、金色の個別包装紙に包まれた、似通った形のウサギのチョコレートだけでなく、金色以外の色が付されたウサギチョコレートに対しても、販売禁止命令を下しました。

興味深いことに、連邦最高裁判所は、リドルの商品に付された「Favorina」のラベルは、立体商標との誤認混同のおそれを軽減する要因とは評価しませんでした。裁判所は、食料品の場合、平均的な需要者の注意力において、購入時に、ラベルの表示に注意を払うことは必ずしも想定されず、このため、ラベルではなく、自身が記憶する商品の形状や主な特徴を頼りに商品を選択する傾向が認められると述べました。


今回の判決によって、リドルは、スイス国内で、リンツの金色のウサギに似た形状のチョコレートの販売が禁止されるだけでなく、在庫品を全て廃棄処分する必要があります。