Newsletter

毎月2回、商標に関するニュースレターを発行しています。

最新号(VOL.253 – 2026/08/01)

知財高裁:原告による「Alphacool」の商標登録は、公序良俗を害するおそれがある商標に該当

 

[Newsletter vol. 253]


知的財産高等裁判所は、本年7月27日、登録第6680828号商標「Alphacool」(本件商標)はALPHACOOL GmbHの先使用商標(引用商標)との関係で商標法4条1項7号に該当するとして本件商標の登録を無効とした特許庁の審決(無効2025-890027号)の是非が争われた審決取消訴訟において、特許庁の判断を支持する判決を言い渡しました。
[令和8年(行ケ)第10008号 審決取消請求事件、知財高裁第2部 森冨裁判長]


本件商標

 栃木県宇都宮市所在の個人(原告)は、令和4年5月16日、標準文字からなる商標「Alphacoolを、第9類「「コンピュータ周辺機器(コンピュータハードウエアを含む。)、コンピュータ構成部品の冷却用装置」等を指定して、商標登録出願しました(商願2022-060708)。特許庁は、令和5年3月15日、本件商標を登録しました(登録第6680828号)。


本件商標に対する異議申立及び無効審判(本件審決)

 ドイツ法人ALPHACOOL GmbH(被告)は、令和5年5月17日、本件商標に対して異議を申し立て、本件商標の登録出願前より、「コンピュータ用電源,コンピュータ用冷却装置,コンピュータ周辺装置」などにおいて使用する引用商標との関係において、商標法第4条第1項第7号,10号,15号,19号に該当すると主張しましたが、特許庁は、引用商標は、被告の業務に係る商品であることを表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められない商標権者が本件商標以外にもそれぞれ分野の異なる、複数の商標登録出願、複数の商標登録を保有しているとしても、そのことのみをもって直ちに本件商標が剽窃的な登録出願であり社会的相当性を欠くものと認めることは困難であり、本件商標が不正の利益を得る目的等をもって使用をするものと認めるに足りる事実は見いだせないとして、本件商標の登録を維持する決定を下しました(異議2023-900115号決定)。

 これを不服として、被告が、令和7年4月21日、特許庁に無効審判を請求したところ、特許庁審判合議体は、同年12月8日、以下のように述べ、本件商標商標法417号に該当すると判断しました(無効2025-890027号)。

原告は、他人が使用している商標を意図的に集めて、これらを数年の間に大量に商標登録出願しているものであり、その一環として、被告商品を表示するものとして需要者の間に一定程度知られている引用商標と類似の本件商標を商標登録出願したものといえる。原告は平成27年から本件商標を使用していたことがうかがえるとしても、本件商標を商標登録出願した原告の行為は、他人の商標を剽窃する一環として被告の商標をも剽窃し、被告による引用商標の使用を妨害する、又は引用商標の信用等に便乗するものというべきである。このような行為は、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるというべきである。商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」が含まれる。』


知財高裁の判断

 原告は、令和8年1月15日、知財高裁に本件審決の取消を求め、『原告出願の状況により、遡及的に本件商標の登録出願時における原告の主観的意図を推認するのは論理的に飛躍がある』等主張しましたが、裁判所は、以下のように認定・判断しました。

•原告は、令和元年1013日から令和686日までの間に80、令和元年10月13日から令和4年5月16日(本件商標登録出願日)までの間に14件の登録出願(原告出願)をし、その多くが、他人が使用する商標と同一又は類似の商標を、他人の使用に係る時期に後れて登録出願するものである。また、原告出願に係る商標の多くは造語から成るものでxiaomi」「dyson」「roomba等の需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標も含まれる。さらに、80件のうち48件、14件のうち9件が登録されたところ、前者48件のうち9件に異議・7件に無効審判、後者9件のうち2件に異議・3件に無効審判が請求されている。

•①引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、被告商品である「コンピュータ周辺装置」を表示するものとして、需要者の間に一定程度知られていたこと、②原告が、本件商標の設定登録を受けた後、商標掲載公報の発行の日から2か月以内に、被告販売代理店に対し、本件引用商標の使用の中止及び誠意ある対応を求める本件通知書を差し出していること、③原告は、本件商標の登録出願前から、コンピュータ周辺機器等について、本件商標を使用していた旨の主張をすることを踏まえると、原告において、被告が被告商品を表示するものとして引用商標を使用していることを知らなかったというのは不自然というべきであり、原告出願の状況をも併せ考慮すると、原告は、被告が被告商品を表示するものとして引用商標を使用していることを認識しながら、被告による引用商標の使用を妨害し、あるいは、引用商標の信用等に便乗する目的で、殊更に本件商標の登録出願をしたものと推認され、そうすると、本件商標は、その登録出願の経緯に照らし、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものとして、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。


サウジアラビア、マドリッド議定書に加盟 10月8日より国際出願を受理

日本企業が外国で商標登録する際、マドプロ国際登録(マドプロ)ルートが主流となっていますが[2024年実績:3,016件]、この度、117番目の加盟国としてサウジアラビアが加わり、令和8年10月8日からマドプロルートで出願できます。


Loading Viewer...

「マークス商標ニュースレター」のメール配信をご希望の方は、こちらからお申し込みください。