[韓国&EU] バーチャル商品やNFTデジタル資産に対する商標登録の審査方針を発表

[Newsletter vol. 156]

 これまでもインターネット上での商品取引は行われていますが、通常、商品が実際に利用(消費)されるのは現実空間です。最近では、現実には存在しないものの、仮想空間においてのみ存在するバーチャル商品やデジタルアート、それに関わるNFT(Non-fungible tolens:非代替性トークン)等のデジタル資産が世界各国で注目を集めており、これらにおいて商標登録しようとする動きが活発化しています。

 この度、韓国特許庁(KIPO)及び欧州連合知的財産庁(EUIPO)において、バーチャル商品やNFT資産に対する商標登録の審査方針が公表されました。日本の特許庁における今後の審査にも影響することが想定されます。


.韓国

 韓国特許庁(KIPO)は、バーチャル商品の名称の認定基準と類似判断に関する審査指針「仮想商品審査指針」を策定し、2022714日付で施行されました。

A)区分及び指定商品/役務の表示

今後は、「仮想衣類」、「仮想靴」のように、「仮想+現実商品名」の表示であれば、指定商品/役務の表示として認められる。なお、現実の「衣類」は第25類であるが、「仮想衣類」は第9類の商品として取り扱われる。但し「仮想商品」という名称については、現実の商品が広汎過ぎるため、認められない。

区分指定商品役務の例示
9仮想衣類が記録された仮想世界ゲーム用コンピュータプログラム
9仮想製品すなわちオンライン仮想世界で使用する靴
9ダウンロード可能な仮想衣類
35ダウンロード可能な仮想衣類オンライン小売業
35メタバースを利用した家具販売代行業
35仮想世界における広告代行業
41仮想環境を利用した音楽公演業

B)バーチャル商品に関する類似判断

①仮想商品間の類似判断は、その対象となる現実商品間の類否により判断する。

仮想商品および現実商品間は、非類似商品として審査する。

③但し、周知著名な商標が結合し仮想商品および現実商品間に出所の誤認混同のおそれがある場合には、周知著名商標保護規定に基づいて拒絶する。

仮想/現実指定商品類否注 記
仮想商品間仮想パンツvs仮想衣類類似現実商品のパンツと衣類は類似するため、各仮想商品間も類似
仮想商品間仮想保護ヘルメットvs仮想衣類非類似現実商品である保護ヘルメットと衣類は非類似であるため、仮想商品間も非類似
仮想商品/現実商品仮想シューズvsシューズ非類似仮想商品および現実商品は非類似

2.欧州連合

 欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、バーチャル商品やNFTに関する出願件数が増えていることを踏まえ、来年公表されるガイドラインの検討事項として、バーチャル商品及びNFT化されたデジタル資産の分類に関する考え方を明らかにしました。

  1. 「バーチャル商品」は、デジタル・コンテンツや画像を取り扱うことから、第9類が適当と思われる。しかしながら、「バーチャル商品」の語それ自体、明確性及び正確性を欠いており、当該バーチャル商品と関連するコンテンツの情報を付記して明確に特定する必要がある。(例:「ダウンロード可能なバーチャル被服」)
  2. ニース分類第12版において、「NFTにより認証されたダウンロード可能なデジタルファイル」は第9類に組み込まれる予定であり、NFTは、ブロックチェーンによって登録されたデジタル認証として取り扱われるが、認証されたデジタルアイテムとは別に存在するものである。EUIPOは、NFTの語自体を商品又は役務の表示として認めず、NFT認証の対象となるデジタルアイテムを特定する必要がある。
  3. バーチャル商品やNFTに関する役務については、これまで同様、従来の役務の分類の考え方に従って判断する。