知財高裁:商標「Tibet Tiger」は、チベット製のトラの図柄を描いた絨毯等の品質表示に該当

[Newsletter vol. 196]


知的財産高等裁判所は、令和6年2月28日、文字商標「Tibet Tiger」の自他商品識別力及び品質誤認のおそれが争われた審決取消請求事件において、本願商標からは「チベットのトラ」ほどの意味合いを容易に理解、認識させるとして、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号により登録を認めることができないとの特許庁の審決(不服2022-14461号審決)を支持する判決を言い渡しました。[知財高裁令和5(行ケ)10116/第4部宮坂裁判長]


本願商標

 本願商標は、標準文字で書されたTibet Tigerの文字からなり、第27類指定商品「じゅうたん,敷物,マット,ラグ,ヨガ用マット,織物製壁紙,壁掛け(織物製のものを除く。)」において、令和3年10月4日に、特許庁に出願されました(商願2021-123161)。特許庁審査官が本願商標を拒絶したことから、出願人は、拒絶査定不服審判を請求しましたが(不服2022-14461)、特許庁は、以下のように述べ、本願商標を拒絶する審決を下しました。

 本願商標は、構成全体として「チベットのトラ」ほどの意味合いを容易に理解、認識させる。そして、本願指定商品中の「じゅうたん,敷物,ラグ」との関係において、チベットやネパールは、じゅうたんの生産地及び販売地として世界的に知られており、チベット民族や、ネパールに在住しているチベット難民によって手織りされているじゅうたんを「チベットじゅうたん」と称されていること、また、「チベットじゅうたん」の中でもトラのモチーフは、位の高い僧侶のためにつくられていたことから由緒あるものといわれ、トラの図柄を描いた、あるいは、トラの形状を模した「チベットじゅうたん」は、Tibetan Tiger (Rug)」などと称されている。そうすると、「Tibet Tiger」の文字よりなる本願商標をその指定商品中「チベットで生産又は販売される、トラの図柄を描いた、あるいは、トラの形状を模したじゅうたん,チベットで生産又は販売される、トラの図柄を描いた、あるいは、トラの形状を模した敷物,チベットで生産又は販売される、トラの図柄を描いた、あるいは、トラの形状を模したラグ」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の産地又は販売地、品質を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識しない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3に該当し、また、前記商品以外の「じゅうたん,敷物,ラグ」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16に該当する。


財高裁の判断

 出願人は、令和5年10月18日、本件審決の取消しを求め、知財高裁に提訴しましたが、裁判所は、以下のように述べ、出願人の訴えを退けました。

  1. 原告は、日本における取引者・需要者にとってチベットという地名は必ずしも著名ではなく、チベットトラという亜種(分類)も存在しないなどとして、本願商標は「Tibet Tiger」という造語として認識される旨主張するが、本願商標は、構成全体として「チベットのトラ」ほどの意味合いを容易に理解、認識させるものと認められ、その旨をいう本件審決の判断に誤りはない。日本の取引者・需要者にとってチベットという地名が必ずしも著名でないことを認めるに足りる証拠はなく、また、チベットトラという亜種(分類)が存在しないことは上記認定を妨げるものではない。
  2. 取引の実情を踏まえると、「Tibet Tiger」の文字よりなる本願商標をその指定商品中、トラの図柄又はトラの形状のチベットじゅうたん、チベット製ラグ等に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、単に商品の産地又は販売地であるチベット、あるいはトラの図柄又は形状といった品質を表示したものと理解するにとどまるというべきである。
  3. 本願商標をその指定商品中、産地、販売地がチベットではなく、図柄や形状がトラと関係のない「じゅうたん、敷物及びラグ」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるといえる。