大阪地裁 : 無効とされるべき登録商標「熱中対策応急キット」に基づく権利行使は、認められない

[Newsletter vol. 191]

 大阪地裁は、令和5年12月19日、熱中症に応急的に対応するための物品一式が収納された商品における「熱中対策応急キット」の名称の使用が、登録第6526506号商標「熱中対策応急キット」(以下、本件商標)を侵害するかが争われた裁判において、本件商標は商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであり、無効審判により無効とされるべきものであるとして、原告(商標権者)の主張を退ける判決を言い渡しました。
[大阪地裁令和4年(ワ)第98188号/第21部民事部 武宮裁判長]


本件商標

 本件商標は、標準文字で書された「熱中対策応急キット」からなるところ、第5類「タブレット状サプリメント,その他のサプリメント」、第9類「カード型温度計」、第18類「ポーチ,かばん類」、第21類「化学物質を充てんした保温保冷具,再利用可能な代用氷,水筒,飲料用断熱容器,携帯用クーラーボックス(電気式のものを除く),保温袋」、第24類「布製身の回り品,タオル」、第32類「飲料水,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、2021年4月13日、特許庁に出願され、翌年3月11日に登録されました。


被告商品

 被告(リンクサス株式会社)は、平成31年4月から、「熱中対策応急キット」との標章が収納バッグに付され、熱中症に応急的に対応するための物品一式が同収納バッグに収納された商品(被告商品)の広告販売を開始しました。


裁判所の判断

 裁判所は、以下のように述べ、原告の訴えを退ける判断を下しました。

  • 「熱中対策応急キット」の標章が付された商品は、平成24年頃から、被告を含む多数の法人において、熱中症に応急的に対応するための物品一式として広告販売されている。原告も、令和元年から、熱中症に対応するための物品一式が収納されたポーチに「熱中対策キット」との標章を付して広告販売している上、令和5年には、熱中症に応急的に対応するための物品一式がポーチに収納された「熱中対策応急キット」との名称の商品の広告販売を開始している。
  • 本件指定商品は、熱中症の対策又は応急処置に用いる物品ないしそれらを収納するポーチ等の商品に含まれると認められるところ、標準文字で表される「熱中対策応急キット」との本件商標がかかる商品に使用された場合、当該商品の取引者又は需要者によって、当該商品の用途を示すものとして一般に認識される状態となっていたといえる。そうすると、本件商標「熱中対策応急キット」は、指定商品の用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当するものと解するのが相当である。
  • したがって、本件商標は、同号に違反して登録されたものであり、無効審判により無効とされるべきものであるから、原告は、被告に対し、本件商標権を行使することができない(法46条1項1号、39条、特許法104条の53第1項)。