米国NY州連邦地裁:トム・ブラウン氏による4本ラインの使用は、アディダスの3本ライン商標権侵害には該当せず

[Newsletter vol. 168]

米国NY州連邦地裁は、2023年1月13日、陪審員による審理の結果、アディダスの訴えを退け、デザイナーのトム・ブラウン氏が4本線を付したアパレルやシューズを販売する行為は、アディダスの商標権侵害及びダイリュージョンには該当しない、との判断を下しました。

[adidas America, Inc., et al., v. Thom Browne, Inc., 1:21-cv-05615 (SDNY)]

アディダスは、同社の3本ライン商標と出所混同が生じるほど似通っているとして、NY拠点とするデザイナー、トム・ブラウン氏の4本ライン商標出願に対し、2018年に欧州で異議を申し立て、米国でも2020年12月に異議を申し立てました。

2021年6月、アディダスは、同社が1950年代から使用する3本ラインと似通った商標を付したスポーツウェアやスポーツシューズを販売するトム・ブラウンの行為は、商標権侵害及びダイリュージョンに該当するとして、裁判所に提訴しました。アディダスは、3本ライン商標に関して、2008年以降、90件以上の裁判を行い、200件以上和解交渉を行った実績を裁判所に提出し、被告商品を見た需要者であれば、外観及び全体の印象が3本ラインと似通っていることから、アディダスの商品、又は、アディダスと関係がある者による商品と誤認すると主張しました。また、4本ラインを付したスポーツ用アパレルを展開し、FCバルセロナとパートナーシップを結ぶ等、トム・ブラウン氏がスポーツウェア市場に侵入したことで約8百万ドルの損害賠償を求めました。


これに対し、トム・ブラウン氏は、異なる価格帯や市場での両者のポジションの相違により、誤認混同のおそれは低いとして、真っ向から争いました。また、2007年に“3本ライン”の使用を中止し、“4本ライン”に変更してから既に相当の時間が経過していることを踏まえ、権利の上に眠るアディダスの権利は消滅しており、その間、両者のストライプ商標は併存し続けていることから、アディダスのブランドに損害は生じていない、と反論しました。


法廷でのトライアルの後、陪審員は、トム・ブラウン氏の4本ラインを見た需要者がアディダスの商品と誤認する可能性は低い、との評決を下しました。