知財高裁:商標「O!OiMAIN」は丸井グループの周知ハウスマークと類似しており、登録は無効

[Newsletter vol. 198]


 知的財産高等裁判所は、令和6年3月27日、登録第6371695号商標「O!OiMAIN」(以下、本件商標)の有効性が争われた審決取消審判事件において、特許庁の審決(無効2021-890032号審決)を取消し、本件商標は、原告である株式会社丸井グループの有名なハウスマーク「〇|〇|」に係る商標登録第4640297号(以下、引用商標)と類似するとして、商標法第4条第1項第11号により、本件商標の登録は無効との判決を言い渡しました。
[知財高裁令和5年(行ケ)第10068号/第2部清水裁判長]


本件商標

 本件商標は、「O!OiMAIN」の各文字又は符号を斜体のゴシック体で書した構成からなるところ、第9, 18, 25類の商品を指定して、令和2年3月11日に韓国の個人よって商標出願され(商願2020-26360)、翌年4月1日に商標登録されました。

 原告の主張によれば、本件商標権者が代表を務める韓国企業は、令和元年頃より、本件商標及び「5252byO!Oi」から「O!Oi」の部分を抽出し、変形した「OIOI」「OiOi」「OIOI COLLECTION」を被服、バッグ等に付して、通販サイトで日本で販売しているようです。


無効審判

 株式会社丸井グループは、2つの丸と2本の縦棒を交互に「〇|〇|」と表した図形からなる標章(原告標章)がハウスマークとして周知であるところ、本件商標は類似しており、また、本件商標が本件指定商品に使用された場合、需要者が丸井グループとの間で誤認混同するおそれがあることから、本件商標は商標法第4条第1項第11号又は第15に該当するとして、令和3年7月14日、特許庁に対し、登録無効審判を請求しました。

 しかしながら、特許庁は、令和5年5月18日、「〇|〇|」が取引者、需要者の間において広く認識されているとしても、『本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれがないことから、外観、称呼及び観念が取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等により総合的に判断すると、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品及び指定役務の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるというべきである』として、本件商標の登録は有効との審決を下したことから、原告は、昨年6月26日、知財高裁に提訴しました。


知財高裁の判断

 裁判所は、以下のように述べ、本件商標は引用商標との関係において商標法第4条第1項第11号に該当すると判断しました。 

  • 原告標章(引用商標)は、本件出願日及び本件査定日において、原告らの業務に係る商品又は役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めるのが相当である(被告も、この判断を争うものではない)。
  • 本件商標の構成文字又は符号中の「MAIN」の文字は、「主要な」等の意味を有し、我が国において日常的に広く用いられる「メイン」の語に相当する英単語であるから、この語は、ひとまとまりの単語として強く認識される。かつ、それが多くの場合、形容詞として他の語を修飾するために広く用いられている語であることは、公知の事実である。
  • O!Oi部分は、特定の意味合いを有しない一種の造語であり、それゆえに、平易な英単語のみからなるMAIN部分との対比において視覚的に目立つものである。被告が代表者を務めるファインドフォーム社は、その製品に「OIOI」「OiOi」「O!Oi」等の標章を付して販売するなどしている。このような取引の実情を併せ考慮すると、O!Oi部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識としての印象を強く与えるものであると認める。MAIN部分は、「MAIN」の語の通常の意味に照らしても、取引の実情においても、商品の出所識別標識としての印象は、O!Oi部分が与えるそれと比較して、相当程度に弱いというべき。
  • 以上によると、本件商標のO!Oi部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえ、本件商標の各構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどに不可分的に結合していると認められないから、本件商標のO!Oi部分だけを各引用商標と比較して商標の類否を判断することも許される
  • 取引者、需要者は、本件商標のO!Oi部分を見た場合、これが「〇|〇| 」と実質的には変わりのないものを指すと理解し得るということができるから、隔離観察を前提とすると、両者は、外観上極めて相紛らわしいものであると認める。迅速を貴ぶ商取引において、アルファベットの文字列の中に配された「!」の符号は、その形状に照らし、当該文字列からの示唆の大小にかかわらず、「I」の文字等と変わりのないものと理解され得る
  • 本件商標のO!Oi部分と引用商標とが、外観上極めて相紛らわしいことを踏まえると、O!Oi部分についても「マルイ」の称呼が生じ得る。また、本件商標のO!Oi部分が特定の意味合いを有しないとしても、同部分は引用商標と外観上極めて相紛らわしいから、同部分からは、引用商標と同様の観念が生じ得る
  • 以上のとおり、本件商標のO!Oi部分と引用商標は、外観、称呼及び観念の点で極めて相紛らわしいものであり、加えて、原告標章(引用商標)が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されていることなどを併せ考慮すると、本件商標のO!Oi部分と引用商標については、両者が同一の商品又は役務について使用された場合、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認める
  • 本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品の一部と同一であり、又はこれらに類似する。
結合商標の類否に関するこれまでの審決・判決に照らし、本件商標の分離観察に関する裁判所の認定には違和感を感じざるを得ません。引用商標の周知性と出願人の悪意性が絡む事案とすれば、11号適用における一つの指針と捉えたいところです。