特許庁:「魅惑の濃厚ショコラ」と「魅惑の濃厚チョコレート」は、商標非類似と認定

[Newsletter vol. 194]

 特許庁は、令和6年1月16日、商願2022-56052「魅惑の濃厚ショコラ」は先行登録商標「魅惑の濃厚チョコレート」と類似するとした審査官の拒絶査定の妥当性が争われた審判事件において、原査定を覆し、両商標は非類似として、「魅惑の濃厚ショコラ」の登録を認める審決を下しました。[不服2023-3461号審決]


本願商標

 サントリーホールディングス株式会社は、令和4年5月18日、標準文字からなる商標「魅惑の濃厚ショコラ」を、第29類指定商品「ココア入りの又はココア風味の乳飲料」において、特許庁に出願しました。 

 特許庁審査官は、森永乳業株式会社が所有する先行登録第6243421号商標「魅惑の濃厚チョコレート」(標準文字、指定商品:30類チョコレートを使用したアイスクリームのもと、他。以下、引用商標。)と類似するとして、商標法第4条第1項第11号により、本願商標の拒絶する査定を下したことから、出願人は、これを不服として、令和5年3月1日、特許庁に不服審判を請求しました。


特許庁の審決

 特許庁審判官は、以下のように述べ、本願商標は商標法第4条第1項第11に該当しない、との審決を下しました。

本願商標は、「魅惑の濃厚ショコラ」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「魅惑」の文字は「魅力で人をひきつけまどわすこと。」の意味を、「濃厚」の文字は「色や味などが濃いこと。」の意味を有する語であり、「ショコラ」の文字は、我が国においても親しまれたフランス語「chocolat」の片仮名表記と看取、把握されるものであって、本願の指定商品である「ココア入りの又はココア風味の乳飲料」との関係において、「ココア」の意味を理解させるものであることから、本願商標は、その構成全体から「魅惑の濃いココア」程の意味合いを想起させるものといえる。そうすると、本願商標は、その構成文字に相応して、「ミワクノノウコウショコラ」の称呼を生じ、「魅惑の濃いココア」程の観念を生じるものである。

引用商標は、「魅惑の濃厚チョコレート」の文字を標準文字で表してなるところ、「チョコレート」の文字は、「カカオの種子を煎って砕いてペースト状にしたものをベースに、カカオ脂・砂糖・香料などを加えて練り固めた菓子。」の意味を有する語であることから、引用商標は、その構成全体から「魅惑の濃いチョコレート」程の意味合いを想起させるものといえる。そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「ミワクノノウコウチョコレート」の称呼を生じ、「魅惑の濃いチョコレート」程の観念を生じるものである。

•本願商標と引用商標とは、後半部の「ショコラ」及び「チョコレート」の文字が明らかに相違するものであるから、両商標は、外観上、明確に区別できる。また、本願商標から生じる「ミワクノノウコウショコラ」の称呼と、引用商標から生じる「ミワクノノウコウチョコレート」の称呼とは、後半部の「ショコラ」及び「チョコレート」において、語調、語感が明らかに異なるものであるから、両商標は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。さらに、観念については、本願商標は「魅惑の濃いココア」程の観念を生じるのに対し、引用商標は「魅惑の濃いチョコレート」程の観念を生じることから、両商標は、観念上、相違する

•そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念において明らかに異なるものであるから、これらを総合して判断すれば、両者は、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。