特許庁:三菱鉛筆「uni」の本体カラーについて、国内初となる色商標の防護標章登録を認定

[Newsletter vol. 193]

特許庁は、令和6年1月17日、三菱鉛筆「uni」の本体カラーである赤紫色と黒色(及び、金色)の組み合わせ(色商標)について、第9類「スマ-トフォンやタブレット型コンピュ-タのタッチパネルを操作するためのペン型デ-タ入力具」に使用された場合、三菱鉛筆株式会社の業務に係る商品(鉛筆)と混同を生ずるおそれがあるとして、拒絶査定を取消し、当該色商標を防護標章として、登録を認める審決を下しました。
[不服2022-4913号審決、不服2022-4914号審決]


三菱鉛筆「uni」色商標

 三菱鉛筆株式会社は、赤紫色と黒色(及び、金色)の組み合わせからなる三菱鉛筆「uni」の本体カラーに係る色商標について、第16類指定商品「鉛筆」における長年の使用により自他識別機能を発揮するに至っているとして、商標法第3条第2項の適用により、同商品において商標登録(①6078470, ②6078471)が認められた後、第9類「スマ-トフォンやタブレット型コンピュ-タのタッチパネルを操作するためのペン型デ-タ入力具」他を指定商品として、特許庁に「防護標章登録出願」しました(商願2019-96560, 2019-96561)。


拒絶査定

 特許庁審査官は、本件防護標章出願について、『原登録商標の指定商品(鉛筆)と本願標章の指定商品(タッチペン)の間に密接な関連性があるとは認められず、本願標章は、その指定商品(タッチペン)との関係においては、依然として商品の魅力向上等のために選択・使用されるものの域を出るものではないというのが相当であるから、本願標章がその指定商品に使用された場合に、出願人又は出願人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのごとく、商品の出所の混同を来すほどの強い識別力を備えているものということはできない。したがって、本願標章は商標法第64条に規定する要件を具備しない。』として、登録を拒絶しました。これに対し、三菱鉛筆は、特許庁に拒絶査定不服審判を請求しました(不服2022-4913,不服2022-4014)。


特許庁の審決

 特許庁審判官は、1958年(①)又は1966年(②)から現在に至るまで、本件防護標章出願に係る色の組み合わせを付した「鉛筆」が継続して販売され、全国のほぼ全ての文房具店で取り扱われていること、H30年の販売実績:約775万本(①)、約258万本(②)、H27年の三菱鉛筆のシェア:53.7%、その他広告宣伝やメディア掲載等を踏まえ、『原登録商標は、使用商品への長年の一貫した使用によって、請求人の業務に係る商品(鉛筆)を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められる。』と認定し、その上で、『使用商品(鉛筆)と本願標章の指定商品(タッチペン)の関連性を考えるに、タブレット型端末やスマートフォンが学校や職場を含む一般に普及している現状からすれば、両商品とも「文字等を書くためのもの」という用途を共通にするものであり、タッチペン付きのボールペンや鉛筆型のタッチペンが販売されている事実もあることから、両商品は需要者を共通にするものとみるのが相当である。また、文房具メーカーが「タッチペン」の製造を行っている事実もうかがえることから、その製造業者を共通にする場合もあるといえる。加えて、販売場所についても、店舗において隣接する売場で販売されていることやインターネット上で同一のカテゴリの商品として販売されていることからすれば、その販売場所を共通にする場合もあるといえる。以上を踏まえると、原登録商標と同一の構成態様からなる本願標章が他人によって本願標章の指定商品に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。』、『したがって、本願標章は、商標法第64条の規定する要件を具備する』として、原査定を取り消す審決を下しました。

色商標で防護標章登録が認められた国内初の事例となりました。三菱鉛筆は、実際に本願標章を付したuniタッチペンを販売しているにも拘らず、通常の商標出願ではなく、敢えて、防護標章出願を行った作戦が功を奏したようです。お見事!