ドイツ連邦最高裁判所:Lindtうさぎチョコレートの「金色」に対する商標の保護を認める

[Newsletter vol. 134]

ドイツ連邦最高裁判所は、2021年7月29日、スイスのチョコレート老舗Lindt(リンツ)の金色の個別包装紙に包まれたウサギチョコレートについて、使用によって獲得した名声により、商標として保護されるとの判断を下しました。[Case: ZR 139/20]


Lindt Gold Bunny

2018年、競合するHeilemann社がドイツにおいて金色の個別包装紙に包まれたウサギチョコレートを販売したことから、Lindt社は、長年の使用によって、同社のウサギチョコレートの個別包装の「金色」は出所機能を発揮しており、未登録商標の侵害に該当するとして、ミュンヘン地方裁判所に提訴しました。

Lindt社は、何十年にも及ぶ使用実績により、同社の有名なイースター・バニー(復活祭のウサギ)チョコレートの「金色」は周知著名性を獲得していると主張しました。地方裁判所はこの主張を認めましたが、ミュンヘン高等裁判所は、ウサギチョコレートにおけるLindtの「金色」の周知著名性が、形状を問わず金色の個別包装紙で包まれたウサギチョコレート全てに及ぶわけではなく、Lindt社も金色以外の色で包んだウサギチョコレートを販売していることを指摘し、消費者が、Lindt社のものとは異なる形状のウサギチョコレートの「金色」をもって、当該商品の出所を識別しているとは想像し難いと述べ、Lindt社のウサギチョコレートの個別包装紙の「金色」を未登録商標と認定することはできないとして、地裁判決を覆す判断を下したことから、Lindt社は連邦最高裁判所に上告しました。


連邦最高裁判所の判断

7月29日の判決において、連邦最高裁判所は、Lindt社の主張を認め、以下のように述べ、高等裁判所の判決を取り消す旨、言い渡しました。

Lindt社は、同社のウサギチョコレート(Lindt Gold Bunny)の「金色」が、関連公衆において、使用によって、商標としての特別顕著性を獲得(acquired distinctiveness)していることを十分立証した。すなわち、Lindt社が実施し、裁判所に提出した調査結果によると、70%以上の人が、Lindt Gold Bunnyの「金色」を同社と関連付けて認識している。したがって、当該商品の個別包装に、「金色」以外に他のデザイン要素(座っているウサギ、赤いリボンと金色の鈴、「Lindt Gold Bunny」の文字)が描かれていることによって、「金色」が商標として機能し得ないことにはならない。他のデザイン要素が存在していたとしても、関連公衆が、「金色」をもって、ウサギチョコレートの出所標識として認識していることに疑いの余地はない。

本件は、この後、高等裁判所に差し戻され、両者の間で誤認混同のおそれがあるか否かが審理されます。

Lindt社は、金色の個別包装紙で包まれた同社のウサギチョコレートの形状を欧州連合商標として登録を試みましたが、2012年5月24日の欧州司法裁判所の判決(Case C-98/11 P)によって、拒絶が確定しました。このため、ウサギチョコレートの形状ではなく、「金色」の色自体が自他商品識別力を発揮しており、色商標が侵害されたとして、争いました。連邦最高裁判所は、特別顕著性の基準値50%を超える認知度の調査結果が提出されたことを好意的に捉えており、色商標の認知度の立証方法において、認知度調査の必要性が改めて浮き彫りになりました。差戻審では、他社もウサギチョコレートに金色を使用している事情を踏まえて誤認混同のおそれが評価されるため、最終的にどういう判断が下されるか、裁判の動向が気になります。