[日本]知財高裁:「甘味 おかめ」と「おかめ」は類似商標
知的財産高等裁判所は、9月24日、以下の態様からなる本願商標「甘味 おかめ」と引用商標「おかめ」との類否が争われた審決取消裁判において、両商標は類似するとの特許庁の判断を支持する判決を言い渡しました。
原告(株式会社石塚恒産)は、第30類「菓子」他において上記の「甘味 おかめ」商標(以下、本願商標)を出願しました(商願2017-164914)。これに対し、特許庁は、タカノフーズ株式会社の所有に係る登録第4901652号商標「おかめ」(指定商品:第30類サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,他。以下、引用商標)と類似するとして、商標法4条1項11号を理由に、本願商標の登録を拒絶しました。拒絶査定不服審判において、特許庁は『本願商標の要部である「おかめ」の文字部分と引用商標とは,外観において「おかめ」の構成文字が同一であり,「オカメ」の称呼及び「お多福の仮面。お多福の面に似た顔の女」の観念を同一とするものであるから,これらを総合勘案すれば,本願商標と引用商標とは,互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきである。』(不服2019-4521号審決)と判断したため、原告は、審決の取消を求め、知的財産高等裁判所に提訴しました。
原告は、『「おかめ」という店舗名や「おかめ」を用いた一般名詞は多数存在するため、「おかめ」の語の識別力は弱い。「甘味」の語と「おかめ」の語との間に観念的な結合関係が存在する。本願商標は、「古風な甘味のおかめ」、「おかめという屋号の甘味処」という意味合いを想起させる不可分一体のものとして認識されるのであり、各要素が観念的に結合し、分離して観察すべきでない。よって、本願商標から「おかめ」の部分を抽出して「オカメ」の称呼及び「お多福の仮面」の観念が生じると認定した点において、審決は誤りである。』、『引用商標から生ずる称呼及び観念は「笑顔のおかめ」あるいは「おかめマークのおかめ」といった、お多福面の図形の観念を含むものとなる。したがって、引用商標の「おかめ」の文字部分のみを抽出して本願商標との対比に供した点において、審決は誤りである。』等と主張しました。
しかしながら、裁判所は、以下のように述べ、本願商標と引用商標とは類似すると判断しました。
- 本願商標の外観を見ると,同一の色の「甘味」の文字部分と「おかめ」の文字部分とが,間隔を空けながらも一列に配置され,その背景に,上記各文字部分と一部重なるような形で,より淡色ではあるものの,同系統の色で表された家紋様の図形部分が配置され,その一体性はさほど強いものではなく,むしろ,「甘味」の文字部分と「おかめ」の文字部分とは,字の大きさも太さも全く異なっている上,かなり広い間隔を置いて配置されているため,それほど統一感があるとはいえないし,と見える。そうであるとすると,本願商標の外観の構成は,分離観察を不可能図形部分も各文字部分を有機的に結合させるほどの機能を果たしているとは見えず,むしろ,背景の装飾といった程度の機能を果たしているのにすぎないとするほどの一体性を有しているとは認められない。
- 甘味を提供する飲食店において,屋号と家紋を一体的に組み合わせた商標を用いることが一般的に行われていると認めるに足りる証拠はないし,本願商標が,原告の屋号と家紋を表した商標として著名であると認めるに足りる証拠もない。そうすると,本願商標に接した需要者が,本願商標を甘味処の屋号とその家紋を一体として表した商標であると観念するとはいえない。
- そうすると,本願商標は分離観察をすることも許されるものというべきところ,本願商標のうち,「おかめ」の文字部分は,大きな字体の太字で書かれており,目立つものである上,自他商品識別力も有するといえるから,この部分を要部として抽出することも許されるものというべき。
- 引用商標は,お多福の面を表した図形部分を上に配置し,その下に「おかめ」という文字部分を配置したものであるが,特に工夫もなく,両者が上下に配置されているだけであることからすると,分離観察を許さないほど全体が不可分一体になっているということはできない。図形部分の方が,文字部分よりも大きいとはいえ,文字部分もそれなりの大きさを有し,太い字体で記載されており,それなりに目立つ上,自他商品識別力も有することからすれば,この部分を要部として抽出することも可能であるというべき。
- 引用商標の要部は引用商標全体又は図形部分であると考えた場合,外観は異なるものの,「オカメ」という称呼及びお多福等の観念においては共通する。このように,称呼,観念において共通することや,外観においても,「おかめ」という文字部分は共通することを併せ考えると,本願商標と引用商標とは,出所につき相紛れるおそれがある。
判決文は、こちら
裁判所は判決文中で「結合商標」に関する最高裁判決を引用しておりますが、図形の下に文字を配置しただけの引用商標の構成を「結合商標」と解することに、些か疑問を感じます。本件の場合、お多福とおかめとは同義との事実認定がされていることを考慮しますと、結論として、裁判所の判断は妥当かと思われます。