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[日本]知財高裁:商品の類否に関する判例、「翻訳支援ツール」と「電子応用機械器具」は類似

知的財産高等裁判所は、10月8日、「電子応用機械器具」と「翻訳業務を支援するためのコンピュータソフトウェア・コンピュータプログラム」との商品の類否が争われた審決取消裁判において、両商品は類似するとの特許庁の判断を支持する判決を言い渡しました。[令和2年(行ケ)第10021号 審決取消請求事件、第3部:鶴岡裁判長]

原告(株式会社サン・フレア)が、平成29年9月26日、文字商標「POET ポエット」について、第9類「翻訳業務を支援するためのコンピュータソフトウェア・コンピュータプログラム」を指定商品として商標登録出願したところ(商願2017-128337)、特許庁は、先行登録第4634308号商標「POET」(引用商標)の第9類指定商品「電子応用機械器具」(引用指定商品)と類似するとして、商標法第4条第1項第11号に該当するとして、登録を拒絶しました。拒絶査定不服審判(不服2018-17007)においても、同じ理由により登録が拒絶されたため、原告は、これを不服として、令和2年2月18日、裁判所に特許庁の拒絶審決を取り消す訴えを起こしました。

原告は、『本願指定商品は,プロの翻訳者が技術分野ごとの専門辞書を使って翻訳を行う「人手翻訳」を支援するための「翻訳支援ツール」又は「翻訳支援ソフト」(以下「翻訳支援ツール」という。)であり,日本語と外国語とを自動的に置き換えて翻訳を行う翻訳機械は搭載されていない。本件審決が,引用指定商品に含まれ,本願指定商品に類似する商品の例として挙げているコンピュータソフトウェアは,いずれも,翻訳機械を搭載し,自動翻訳を行うことを主な機能とする「翻訳ソフト」(以下「翻訳ソフト」という。)である。翻訳支援ツールは,汎用性のある「電子計算機用プログラム」ではなく,特殊な「翻訳業務を支援するためのコンピュータソフトウェア・コンピュータプログラム」であるから,引用指定商品の例として挙げられている翻訳ソフトとは根本的に異なる商品である。「翻訳支援ソフト」は,翻訳支援ツールとは全く異なるものであり,このような違いを理解していない特許庁の主張は,いずれも失当である。したがって,普通の消費者が,専門家が使用する翻訳支援ツールである本願指定商品を,引用指定商品と類似する商品であると考えることはあり得ず,ましてや,プロの翻訳者や翻訳事業者がそのように考えることはあり得ない。』等と主張しました。

しかしながら、裁判所は、以下のように述べ、本願指定商品と引用指定商品とは類似すると判断しました。

  1. 指定商品が類似のものであるかどうかは,商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には,たとえ,商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても,商標法4条1項11号にいう「類似の商品」に当たると解するのが相当である(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。
  2. 一般に,翻訳支援ツールとは,単に自動翻訳をするためのプログラムではなく,翻訳者が同ツールに蓄積された対訳データや翻訳メモリ,データベース化された用語集等を利用することにより,翻訳作業をより効率的に,かつ質の高いものとするためのコンピュータソフトウェア又はコンピュータプログラムである。
  3. 引用指定商品は,第9類「電子応用機械器具及びその部品」であり,「電子応用機械器具」には電子計算機(コンピュータ)が含まれるものといえるところ,これを動作させるためには「電子計算機用プログラム」が不可欠であることからすれば,引用指定商品には「電子計算機用プログラム」が含まれるものといえる。
  4. 本願指定商品である翻訳支援ツールも,コンピュータプログラムである以上,引用指定商品である「電子計算機用プログラム」に含まれるから(引用指定商品の「電子計算機用プログラム」は,特に限定がない以上,コンピュータプログラム一般を含むものと解される。そして,翻訳支援ツールも,用途がやや特殊であるとはいえ,コンピュータを動作させて一定の作業を行うためのプログラムである以上,コンピュータプログラムにほかならないのであるから,引用指定商品に含まれることを否定することはできない。),本願指定商品と引用指定商品とは同一である。
  5. 原告は,翻訳支援ツールである本願指定商品は汎用性のある「電子計算機用プログラム」ではなく,翻訳ソフトとは根本的に異なるものである旨主張する。しかしながら,翻訳支援ツールが,自動翻訳を主な機能とするものではなく,翻訳者による翻訳作業を支援するためのものであり,主に翻訳事業者又は翻訳者が使用することが想定されている商品であるからといって,直ちに翻訳ソフトとの類似性が否定されるものではない。
  6. したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

判決全文は、こちらをご覧ください。

昨今のIT化&ネット化社会の進行、スマートフォンの世界的な普及により、今やコンピュータプログラムを用いた製品が一般化しつつある状況下、コンピュータを動作させて一定の作業を行うためのプログラムであれば、第9類「電子応用機械器具」や「電子計算機用プログラム」と類似するとの判断は、時代に追い付いていない印象を非常に感じます。

トリニダード・トバゴ、マドリッド議定書に加盟、 
令和3年1月12日より国際出願を受理

日本企業が外国で商標登録する際、マドプロ国際登録(マドプロ)ルートが主流となっていますが[2019年実績:3,139件]、この度、107番目の加盟国としてトリニダード・トバゴが加わり、令和3年1月12日からマドプロルートで出願できます。