東京地裁:「関ケ原検定」事業に絡む商標裁判、関ケ原町に軍配、登録前の金銭的請求権認めず

東京地方裁判所は、令和8年3月18日、「一級合戦士」や「関ケ原検定」に関する商標登録第6504908号、第6447435号及び第6479731号の商標権者が、「関ケ原検定」事業の実施主体である関ケ原町(被告Ai)やその町長(被告Bi)、職員兼事業担当者(被告Ci, Di)を相手に、商標法第13条の2(設定登録前の金銭的請求権)に基づき、105万円の支払を求めた商標権侵害訴訟において、原告の主張を退ける判決を言い渡しました。
[東京地裁 令和7年(ワ)第70146号/民事第29部澁谷裁判長]


原告の商標権

 原告(一級建築士の資格を持つデザイナー)は、令和2年7月14日以降、第41類「セミナーの企画・運営又は開催」等を指定して下掲の商標を出願したところ、令和3年9月27日以降、特許庁において登録された。


本件訴えに至る経緯

 関ケ原町は、令和2年7月頃から関ケ原検定と称する事業を企画し、令和3年1月20日から同年3月12日までの間、その一環としてプレ検定を実施した際、原告商標1構成中の「一級合戦士」の表示、原告商標2構成中の二体の甲冑を着た人物のイラスト、及び、原告商標3構成中の「関ケ原検定(セキケン)の表示を含むポスターを作成、頒布した。

 これに対し、原告は、令和3年6月17日、関ケ原町の職員で関ケ原検定事業の担当者(2名:被告Ci, Di)宛に、関ケ原検定の実施に対し、原告商標権の侵害行為の差止めを求める旨の書面を送付した。

 被告Ci, Diは、令和3年6月23日付けで、原告に対し、ライセンス契約を締結することなく無断で使用したことを認めるとともに、不備や不誠実な対応を深くお詫びし、ライセンス契約の締結に向けた協議をお願いする旨の書面を送付した。

 全証拠からは、原告商標権の設定等登録日以降に被告Aiが原告商標を使用した関ケ原検定の実施やその広告を行った事実はない。


東京地裁の判断(商標法第13条の2の要件非該当性) 

  • 商標法13条の2の警告は、出願に係る商標の使用をした者に対してする必要があるところ、被告関ケ原町以外の被告Bi, Ci, Diについては、関ケ原検定事業の主体であることを認めるに足りる証拠はない
  • 本件警告書の名宛人(被告Ci, Di)は、関ケ原検定事業の担当者であり、本件警告書には、被告Di及び被告Ciの対応次第では、被告関ケ原町の代表者である被告Biに対し、「知的財産権侵害の事実」を通知する旨の記載があること、換言すれば、本件警告書は、関ケ原検定事業の担当者である被告Ci, Diにおいて、本件警告書に記載された対応をすることを求める趣旨にとどまり、これをもって直ちに被告関ケ原ないしその代表者である被告Biに対して警告を発する趣旨のものではなかったことが認められる。そうすると、本件警告書に基づく警告は、関ケ原検定事業の主体である被告関ケ原町に対して向けられたものであると認めることはできず、商標法13条の2所定の要件を満たすものであるということはできない
  • 本件警告書には、「関ケ原検定(セキケン)」及び「合戦士」の商標登録を得ている旨の記載は存在するものの、当該記載が原告各商標に係る商標登録出願の内容である旨の記載や、商標登録出願において記載が求められる内容(登録を受けようとする商標や指定商品又は指定役務)に係る記載はないことが認められる。そして、本件警告書における商標に係る記載内容と原告各商標の内容は明らかに異なるから、これを受領した者において、本件警告書が、出願中の原告各商標についてその使用を警告するものと理解することはできないというべきである。そうすると、本件警告書における上記記載をもって、原告各商標につき具体的な商標登録出願に係る内容が記載されていると認めることはできず、その意味においても、本件警告書に基づく警告が商標法13条の2所定の要件を満たすものであるということはできない