[Newsletter vol. 244]
知財高裁は、令和8年2月25日、株式会社ディーエイチシー(原告)が第3類指定商品「クレンジングオイル」に使用する商標「DEEP CLEANSING OIL」(本願商標)の自他識別力及び使用による特別顕著性が争われた審決取消訴訟において、原告の主張を退け、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、同条第2項の要件(特別顕著性)を具備しないとした特許庁の原審決を支持する判決を言い渡しました。[知財高裁 令和7年(行ケ)第10092号/第4部長谷川裁判長]
本願商標
株式会社ディーエイチシーは、平成29年7月20日、下右掲の態様からなる商標「DEEP CLEANSING OIL」を、第3類「クレンジングオイル」を指定して特許庁に商標登録出願しました(商願2017-96949)。

特許庁審査官は、商標法第3条第1項第3号に該当するとして、令和4年10月13日付けで拒絶査定としたため、原告は、これを不服として、令和5年1月16日、拒絶査定不服審判を請求しました。
審判において、原告は、平成7年12月に本願商標を付した「クレンジングオイル」の発売以来、約30年にわたり継続して販売し、平成29年から令和6年における実績(販売本数:約99~182万本、販売額:27億~52億円、ブランドシェア:6.3~13.4%)や宣伝広告、平成10年から平成23年の人気ランキング記事(クレンジング部門で1位に選出)等を根拠に、本願商標は使用による特別顕著性を獲得していると主張しました。
特許庁の判断(原審決:不服2023-698号審決)
特許庁審判官(合議体)は、令和7年8月6日、『本願商標は、これをその指定商品である「クレンジングオイル」に使用する場合、需要者に、その文字部分より、毛穴の汚れや古い角質などの皮膚の深部の汚れを落とすオイル状の洗浄剤という商品の品質を表示したものと認識、理解させるにとどまる。本願商標の横長長方形部分は、特異な態様からなるものとはいい難く、指定商品を取り扱う業界では、一般的に使用される文字部分の輪郭枠及び白色の背景色を表したものと認識されるから、出所識別標識としての機能を果たすものとはいえない』、また、『原告は、長年にわたって本願商標を継続的に使用しているが、販売本数、販売実績及びブランドシェアは減少傾向にあることに加え、多数の化粧品メーカーが、毛穴の汚れや古い角質など皮膚の深部の汚れを落とすオイル状の洗浄剤の意味合いの表示として、「DEEP CLEANSING OIL」の文字を使用していることからすれば、本願商標が、需要者の間において、原告の業務に係る商品を表示する商標として、広く認識されるに至っているとは認められない。』として、拒絶審決を下したことから、原告は、同年9月22日、原審決の取消しを求め、知財高裁に提訴しました。
知財高裁の判断
- 本願商標の欧文字部分は、幾分デザイン化されているとはいえ、その字体や配置に外観上顕著な特徴があるということはできない。欧文字とほぼ同じ太さの長方形の枠に囲われ、枠内の背景は白色とされているが、文字部分を枠で囲み、枠内の背景色を文字部分とコントラストをつけた色とすることは、当該文字部分を目立たせるためのありふれた手法であり、本願商標の指定商品と類似する化粧品についても、そのような表示を採用する商品は複数存在することが認められるから、「普通に用いられる方法」の域を出ないと解される。したがって、本願商標が法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。
- 原告が約30年にわたり本願商標を付した本件商品を継続的かつ大量に販売してきたこと、本件商品について新聞広告等による宣伝活動が活発に行われるとともに、女性雑誌に多数回にわたって取り上げられ、平成22年までは人気ランキングにおいてクレンジング部門の第1位に選出されたことからすれば、同年ないし平成23年頃の時点においては、本願商標は、原告の業務に係る本件商品を示す標章として、全国の需要者に相当程度浸透していたと認めることができる。
- 一方、遅くとも平成21年以降、複数の化粧品メーカーにより、本願商標と称呼及び観念を同じ「DEEP CLEANSING OIL」商品名に含むクレンジングオイルが販売されるようになったこと、これらの商品の多くが、毛穴の中まで浸透して汚れを落とすこと、古い角質を浮き上がらせて除去することをうたっていること照らすと、本願商標中の文字部分は商品の種類ないし品質を示す共通名称と認識されるようになったと推認するのが相当である。これに加え、本件商品の表面には本願商標だけでなく原告の企業名も表示され、広告類でも「DHCディープクレンジングオイル」等と表示されていることを勘案すると、需要者が、本願商標により原告の業務に係る商品であることを認識することができると認めることは困難である。したがって、本願商標が法3条2項に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。
- 過去の一時期において本願商標が原告の業務に係る商品を示すものとして需要者の間に広く認識されていたとしても、それはその時点までの宣伝広告や販売実績によるものであって、その後に販売実績やシェアが低下すれば本願商標に係る需要者の認識の低下に結びつき得る。そうすると、この点を指摘した本件審決の判断に誤りがあるということはできない。
