[Newsletter vol. 233]
2025年9月23日、EUIPO(欧州連合知的財産庁)審判部は、第5類の商品において、文字商標「GOOD-NITE」の登録を拒絶する原査定を支持する判断を下しました。本件は、健康・ウェルネス分野において、記述的な表現に対する識別力のハードルが高いことを示す事例といえます。
[審判番号 R 1507/2025-2]
2025年3月、英国企業 Bio-Health Limited は、ハーブサプリメント、治療薬、鎮静剤、リラクゼーション剤、不眠症治療薬を含む第5類の商品を指定して、文字商標「GOOD-NITE」を、EU商標出願しました。EUIPO審査官は、英語を話す需要者であれば、「GOOD-NITE」の文字を見て、『good night(お休みなさい)』の意味合いと理解するだけで、安眠の促進という指定商品の目的を直接的に表示したものと認識することから、本願商標は指定商品の特徴の記述的表現に過ぎず、自他識別力を欠くとして登録を拒絶しました。また、「night」と「nite」とのスペル違いによって記述的な意味合いは変わらない、と結論付けました。
これに対し、Bio-Health Limited は、審判部に拒絶査定不服審判を請求し、以下の理由により、原査定の取消を求めました。
- ブランド的綴り:「NITE」の文字は、「night」の語の変形として世間一般に認識されており、ブランド名によく使用されている。このため、需要者は「GOOD-NITE」を記述的な語句としてではなく、むしろ、ブランドや出所標識と認識する。
- 造語性:「good」と「nite」の並置は、よく目にする「good night」のスペルとの差異が認識され、別の新しい語を生み出している。したがって、本願商標は、当該差異により、自他商品識別力を有する。
- 全体としての識別性:たとえ、「good」の文字が記述的な表示だとしても、「nite」の文字は、これには該当せず、両文字の結合により、全体が一体の語として、自他識別力を有する。
出願人は、本願指定商品に係る需要者が、「GOOD-NITE」の文字を見て、直ちに、反射的に睡眠薬に関する記述表示と理解しないことを強く主張し、需要者は、むしろ、本願商標をブランド名として認識すると反論しました。
EUIPO審判部は、本願指定商品に関する需要者について、健康関連商品を購入する際に平均以上の注意力を示す一般大衆、および、高度な注意力を有する専門家を含む、EU域内の英語を話す消費者と認定しました。
また、審判部は、「LITE」や「FRESHHH」、「RELY-ABLE」に対する過去の拒絶事例と同様に、綴りの違い(ミススペリング)や称呼に基づく綴り(発音的スペリング)によって、当該語の記述的意味が失われることはなく、本件の場合、称呼が同一で、意味合いも明確であることから、需要者は、本願商標構成中の「NITE」の文字を、ごく自然に、「NIGHT」と読むと判断しました。
本願商標を付する商品が不眠症治療薬や睡眠関連商品であることを勘案すると、需要者は、「GOOD-NITE」をみて、当該商品が『安眠(a good night’s sleep)』に資するものであると、深く考えずとも、直ちに理解することから、当該文言は、指定商品の品質や目的を直接的かつ明白に宣伝するためのメッセージに該当する。「night」の語から、辞書に掲載の他の意味が生じ得るとしても、そのうちの一つが識別力を欠くものであれば、EUTM規則第7条第1項(c)の拒絶理由に充当する。
以上により、審判部は、本願商標は記述的で、識別力を欠くと認定し、審査官の拒絶査定を支持、審判請求を棄却しました。
