特許庁:クボタ製トラクターのオレンジ色は商標としての出所識別力を発揮せず、登録拒絶

[Newsletter vol. 188]

 特許庁は、令和5年10月31日、国内農機のトップメーカー、株式会社クボタが農業用トラクターに使用するオレンジ色、オレンジ色と黒色(及び白色)の組み合わせからなる色商標(商願2018-162829, 2018-162832, 2018-162834, 2018-162836)について、色のみで出所識別標識として需要者の間に広く認識されているとまではいえないとして、拒絶査定としました。


本願商標

 株式会社クボタは、約5年前の平成30年12月26日、第12類「農業用トラクター」を指定商品として、以下4件の色商標を特許庁に出願しました。

 出願人は、1980年頃から上掲の色彩をトラクターに使用し、近年では国内シェア50%前後(1位)を占めている実績等に基づき、本願商標は自他商品識別機能を有する商標として広く認識されていると主張しましたが、特許庁は、以下のように述べ、本願商標はいずれも商標法第3条第1項第3に該当し、また、3条第2の要件を具備しないとして、登録を拒絶しました。


拒絶査定(特許庁の判断)

  1. トラクターの国内主要メーカーは、出願人のほか、ヤンマー、三菱マヒンドラ、及びイセキが存在するところ、主要メーカーに限らず国内全体のトラクターの取引実情を見ると、車体がオレンジ色の他社のトラクターが複数流通している実情が認められる。トラクターは一般に農業用機械(農機)の一種として取引されているところ、農機の購入に当たっては、中古品の購入を検討する需要者が少なからず存在し、かつ、中古品の農機も相当数流通している実情がうかがえるから、農機の一種であるトラクターに係る取引の実情や需要者の認識を考慮するに当たっては、中古品の流通実情も十分に考慮すべき。また、農機の分野では、トラクター以外にもオレンジ色が普通に使用されている実情がうかがる。以上よりすれば、本願商標のオレンジ色と同系色である赤色を車体に使用する他社商品や、フロントグリルを黒色、タイヤのホイールを白色とする他社商品が多数流通していること、及び、本願商標のオレンジ色と近似するオレンジ色を車体に使用する他社商品も少なからず流通していることが認められるから、本願商標の色彩やその色彩を付する位置に何ら特異性は認められず、単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものというべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
  2. 本願商標は出願人商品は、ボンネットの正面や側面に、デザイン化された「Kubota」の文字など、商品の出所を識別し得る文字が付されているものが多く見受けられます。需要者は、その色だけでなく、商品に付された「Kubota」等の文字も含めて商品の出所を識別している可能性が否定できない
  3. 需要者589人(このうち、トラクター所有者及び農機の流通等経験者は316人)を対象に行ったアンケート調査の結果によれば、出願人は長年高いシェアを維持し、出願人名を知る需要者も多いと考えられるにもかかわらず、本願商標から出願人のみを想起する者は3割程度にとどまり、それに対して、1つの他社又は2以上のメーカーを想起する者、すなわち出願人以外を想起する者は3~4割程度存在し、出願人のみを想起する者の割合を少し上回っていることが認められる。以上よりすれば、アンケート調査の結果からは、本願商標から出願人のみを想起する需要者がそれほど多いとはいえず、むしろ、本願商標について、出願人以外の者が(も)使用する色彩であると認識する需要者が相当程度存在することが認められるから、本願商標を出願人の出所表示として認識していない需要者が相当程度存在する
  4. 本願商標が一定程度知られているとしても、本願商標は多くの場合「Kubota」等の文字や図形と共に使用されている実情、他社商品の実情、需要者のアンケート調査結果、オレンジ色が何人も使用を欲する色彩といえること等の事情を総合的に勘案すると、本願商標は、それのみが独立して、出願人の出所識別標識として需要者の間で広く認識されているとまではいえず、商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない
色商標の登録制度は、今から8年前の2015年4月1日にスタートしました。これまでに「576件」の色商標が特許庁に申請されましたが、登録が認められた色商標は僅かに9件(登録率1.56%)という、超狭き門となっています。登録された9件はいずれも複数色の組み合わせで、単色での登録は未だゼロ。クボタが、国内初の単色商標の登録に挑みましたが、日立建機の前例に沿った判断で拒絶されました。本件でも、色自体が自他商品識別機能を発揮していることを立証すべく、需要者アンケートの調査結果が提出されましたが、特許庁は、「3割程度」の認知度では不十分と認定しました。色商標については、独占適応性も議論になることを勘案しますと、認知度が相当高くない限り、単色での商標登録は難しいように思われます。