商標法の一部を改正する法律(令和5年6月14日法律第51号)が、6月14日に公布

[Newsletter vol.178]

令和5年3月10日に閣議決定された「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が令和5年6月7日に可決・成立され、昨日(614)、法律第51号として公布されました。

 今回の改正は、知的財産の分野におけるデジタル化や国際化の更なる進展などの環境変化を踏まえ、スタートアップ・中小企業等による知的財産を活用した新規事業展開を後押しするなど、時代の要請に対応した 知的財産制度の見直しを目指し、(1) デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化、(2) コロナ禍・デジタル化に対応した 知的財産手続等の整備、(3) 国際的な事業展開に関する制度整備の3つを柱に、不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法を改正するものです。


商標法においては、「登録可能な商標の拡充」に関する規定として、以下が改正されました。

  1. 他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であって、政令で定める要件に該当しないものについて商標登録を受けることができないものとする。

<第4条第1項第8号改正条文>

他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名号に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であつて、政令で定める要件に該当しないもの

【解説】
現行法において、「他人の氏名(個人名)」をその構成中に含む商標については、当該他人の承諾を得ない限り、商標登録は認められませんでしたが、今回の改正により、自己の名前で事業活動を行う者等が、その名前について、同じ氏名の他人が存在する場合、当該他人の認知度や政令で定める要件該当性によっては、承諾を得ずとも、商標登録が認められることになります。

なお、法人の名称(会社名)については、従来とおり、同じ名称の法人が存在する場合、当該他の法人の承諾を得なければ、商標登録は認められません。


  1. 商標法第4条第1項第11号に該当する商標であっても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しないものとする。

<第4条第4項新設>

第一項第十一号に該当する商標であつても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しない。

【解説】
現行法においては、出願された商標と同一又は類似する先行登録商標が存在する場合、たとえ、先行商標権者の同意を得たとしても、特許庁での審査において考慮されませんでしたが、今回の法改正により、先行商標権者の同意があり出所混同のおそれがない場合には、登録可能となります。

なお、同様に、先行又は同日の商標出願人の同意があり、出所混同のおそれがない場合も、登録可能となります(第8条第1項及び第2項改正)。また、上記規定の同意により登録された商標について、不正の目的でなくその商標を使用する行為等を不正競争として扱わないこととされ(不正競争防止法第19条)、一方、不正競争の目的で使用し、他人の登録商標と混同を生じた場合には、登録取消し対象となります(商標法第52条の2)。


不正競争防止法においては、「デジタル空間における模倣行為の防止」に関する規定として、商品形態の模倣行為に、デジタル空間上で提供することも不正競争行為の対象に加えられ、差止請求権等を行使できるようになります。

<第2条第1項第3号改正条文>

他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為


※ 法改正に関する詳細等につきましては、こちらをご覧ください。