[Newsletter vol. 116]
東京地裁裁判所は、2020年10月22日、「2UNDR」ブランドの真正商品(男性用下着)の並行輸入が商標権侵害に該当するか争われた事件で、たとえ、商標権者がシンガポールから日本への輸出を禁止していたとしても、商標権侵害には当たらない、との判断を下しました。
[東京地方裁判所民事第46部、平成30年(ワ)第35053号商標権侵害差止等請求事件]
日本及びカナダにおいて、商標「2UNDR」を第25類商品「男性用下着」他を指定して登録・所有するカナダ法人ハリス・ウイリアムズ・デザイン社は、日本の販売代理店であり、独占的通常使用権の設定を受けた(株)アイインザスカイとともに、(株)ブライトに対し、同社が「2UNDR」ブランドの男性用下着2,387枚(以下、被告商品)を日本に輸入した行為は商標権侵害に該当するとして、裁判所に訴えました。
被告ブライトは、被告商品はシンガポール法人Mゴルフ社から購入したものであり、元をたどれば、原告ハリスのCEOが代表を務める別のカナダ法人から許諾を得てシンガポールに輸入されたものである。このため、被告商品は許諾を得て日本に輸入された真正商品の並行輸入であり、商標権侵害は成立しないと反論しました。これに対し、原告らは、Mゴルフ社はシンガポール国外への許諾商品の輸出が禁止されており、また、被告ブライトが購入した当時、Mゴルフ社とは既に代理店契約が解消していたことから、侵害に当たると主張しました。
最高裁判所は、「フレッドペリー事件」判決において、真正商品の並行輸入の違法性を評価する際の3つの要件を明らかにしました。
1.当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであるか?
2.当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があるか?
3.我が国の商標権者が、直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが、当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価されるか?
東京地裁は、本件において、「2UNDR」商標は原告ハリスの許諾を得てカナダにおいて被告商品に表示されたものである以上、第1要件を満たすと認定しました。また、ライセンシーに課せられた販売地制限やライセンス契約の終了といった事情は、この基準の該当性に影響しない、と指摘しました。
さらに、原告ハリスは、「2UNDR」の商標を両国において登録・所有しており、当該商標は同一の出所を表示することから、第2要件の基準も満たすと判断しました。
第3要件について、男性用下着は運送中に品質が直ちに劣化するものではなく、Mゴルフ社の販売地域制限が品質の維持等と関係するとは認められず、そのことによって品質保証機能が害されることになるとはいえない。このため、日本で販売される2UNDR商品が他国で販売される2UNDR商品と比べて格別の品質等を有していたとは認められない、と認定しました。
以上により、被告商品は、真正商品の並行輸入として、商標権侵害としての実質的違法性を欠く適法なものである、と結論付けました。
判決全文は、こちらをご覧ください。