Newsletter vol.110をリリースしました。

イングランド・ウェールズ高等法院:ランドローバーの四輪車「Defender」の立体形状は、商標として十分機能せず

 イングランド・ウェールズ高等法院(EWHC)は、2020年8月3日、ジャガーランドローバー社(JLR)のSUV「Defender」に関して、当該四輪車の立体形状は同社の商標として十分機能しているとは認められないとの英国知的財産庁(UKIPO)の判断を支持し、同社の訴えを棄却する判決を言い渡しました。
[Jaguar Land Rover Ltd v Ineos Industries Holdings Ltd [2020] EWHC 2130 (Ch)]

事件の背景

2016年4月と5月、ジャガーランドローバー社(JLR)は、ランドローバーの「Defender」の立体形状に関する以下の商標を英国知的財産庁(UKIPO)に出願しました。

当該商標出願において指定された商品・役務は、第9類(コンピュータ、プログラム及びソフトウェア)、第12類(乗物)、第14類(時計、計時用具)、第28類(おもちゃ、ゲーム)、第37類(修理・保守・メンテナンスサービス)。
JLRは、特徴のある「Defender」のオリジナルデザインを他社に模倣されないよう保護するために、当該車種の立体形状を商標として権利取得を図りました。
2019年10月、UKIPOは、Defenderと似通ったオフロード車「Grenedier」を手掛けるIneos(イネオス)社からの異議申立に応じて審理を行い、『熱狂的なファンの眼には特徴のあるデザインと見られたとしても、平均的な需要者の目線で捉えることが重要で、その観点で登録性を判断すべき』として、英国商標法第3条に基づき、自他識別力を欠くとして、その後、本件商標の登録を拒絶しました。

イングランド・ウェールズ高等法院の判断

JLRは、消費者アンケート調査の結果、20~40%の回答者が本願商標の画像をみてランドローバー「Defender 90」だと明らかに認識しているにも拘わらず、UKIPOは当該調査結果を十分評価せず、このため、本願商標の自他識別力の評価を見誤ったものであるから、UKIPOの判断は取り消されるべきと主張しました。
しかしながら、裁判所は、UKIPOの行った事実認定を支持するとともに、調査結果において、回答者の中に、メーカーの名前や、誰がその自動車を製造したのかも分からず、別のメーカーの別の車種と勘違いしたり、単に憶測で答えている者もいる点を指摘し、当該調査から明らかなこととして、ランドローバー「Defender」の立体形状に関して、圧倒的な認知度はなく、ある程度認知されているとしても、商標、すなわち、JLRの商品と他社の商品とを区別する出所表示として、認知されているとは言い難い。20~40%の回答者のみがランドローバー「Defender」シリーズの四輪車だと想起したことを考慮すると、本願商標は本来的に自他識別力を欠くだけでなく、特別顕著性をも認められないとのUKIPOの事実認定は妥当、との判断を示しました。  
以上により、UKIPOは、法の定めるルールに従い、アンケート調査結果を慎重かつ公平に評価しており、その判断に誤りはないと結論づけました。

判決文全文は、こちらからご覧下さい。