知財高裁:「STARBUCKS」と「STARBOSS」は商標非類似&出所混同のおそれなし

[Newsletter vol. 236]


 知的財産高等裁判所は、令和7年10月20日、登録第6595964号商標「STARBOSS」と、世界的に有名なコーヒーチェーン「STARBUCKS」との類似性(商標法4条1項11号)、及び、出所混同のおそれ(同法4条1項15号)が争われた審決取消訴訟において、米国スターバックス社の主張を退け、両商標は類似せず、また、出所混同のおそれはないとした特許庁の審決を支持する判決を言い渡しました。
[知財高裁 令和7年(行ケ)第10036号/第1部本多裁判長]


本件商標

 ケンコーマン株式会社は、2022年1月25日、標準文字で書された商標「STARBOSS」を、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定して特許庁に商標出願し(商願2022-13707)、2022年8月3日、商標登録されました(出願番号: 商標登録第6595964号)。


無効審判(棄却審決)

 米国法人スターバックス・コーポレイションは、2023年4月28日、自社が所有する先行登録商標「STARBUCKS」及び使用商標に基づき、本件商標は商標法4条1項11号及び15号に該当するとして、登録無効審判を請求しました(審判番号: 無効2023-890037)。

 しかしながら、特許庁審判官合議体は、2024年12月17日付け審決において、以下のように述べ、両商標は類似しておらず、また、出所混同のおそれもないと判断しました。

 『中間における「OS」と「UCK」の文字の差異を有し、比較的短い文字構成からなる両者の外観の視覚的印象に与える影響は小さいとはいえないから、両者は、外観上、判然と区別し得』、『中間に位置する「ボ」と「バック」の音の差異において相違するところ、「ボ」と「バ」の音は、共に破裂音であり比較的強く発音され、また、母音において前者が(o)であるのに対し、後者が(a)であって比較的近似しない発音である上、後者は促音を伴っているから一層強く発音され、当該相違音が称呼全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼するときは語調、語感が異なり、両者は、称呼上、明瞭に聴別し得る』、『共に特定の観念を生じないから、観念において比較できない』、『本件商標と引用商標は、外観において判然と区別でき、称呼において明瞭に聴別でき、観念において比較することができないから、外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は 、相紛れるおそれのない非類似の商標である。』

 『引用商標が、原告のコーヒーチェーンを表すものとして需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標とは非類似である。そうすると、取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すると、本件商標を本件指定商品について使用しても、取引者、需要者は、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれはない

 米国スターバックス社は、本年4月22日、特許庁の上記審決を不服として、知財高裁に審決取消訴訟を提起しました。


知財高裁の判断 

1. 両商標の類似性

  • 外観:語頭「STARB」及び語尾「S」の各文字において共通するものの、「OS」、「UCK」の文字において異なっており、欧文字8文字又は9文字といった比較的短い構成において、その差異は明確であるから、外観上、判然と区別し得る。本件商標及び引用商標ともに、欧文字が一連一体にまとまりよく構成されたものであって、「STARB」の部分が視覚上分離、独立して看取し得るとか、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与えるということはできない
  • 称呼:語頭「スター」と語尾「ス」の各音において共通するが、「ボ」、「バック」の音において異なり、比較的短い音数にあって音節数も異なっているから、両称呼は、全体の音感において異なっており、明瞭に聴別し得る。特定の意義を有しない欧文字からなる商標は、我が国で親しまれているローマ字読み又は英語風の読みにより称呼され、一般に、日本語の音節に倣い、特定の音節にアクセントを置かず、平板な調子で称呼されることが多い
  • 観念:「STARBUCKS」の文字は、一種の造語といえるものであるが、原告の業務に係るコーヒー、茶、清涼飲料及び果実飲料等の飲料商品を表示するものとしても需要者の間に広く認識されていたと認められ、引用商標からは「コーヒーチェーンであるスターバックス」の観念が生じる。そうすると、両者から生じる観念は明確に区別することができる。なお、「STARB」から始まる語を引用商標の関連商標として使用していたとか、そのような語が本件商標の指定商品の取引者、需要者において原告との関係を連想させるものとして認識されているなどの事情はうかがわれないから、引用商標の関連商標の観念が生じるということはできない

2. 出所混同のおそれ

本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても異なり、相紛れるおそれのない非類似の商標である。そして、原告や原告子会社が、「STARBUCKS」以外の「STARB」から始まる語を引用商標の関連商標として使用していたとか、そのような語が取引者、需要者において原告との関係を連想させるものとして認識されているなどの事情はうかがわれない

そうすると、引用商標の有名性、指定商品との関連性、取引者・需要者共通性、我が国を訪問する外国人が増加し、日本在留外国人が多数に上っていること、その他種々の事実関係を考慮したとしても、本件商標をその指定商品に使用すると、当該商品が、原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるということはできない