[Newsletter vol. 232]
知的財産高等裁判所は、令和7年9月3日、日本カリフォルニアカスタム株式会社が、第35類「自動車並びにその部品及び附属品(布製の滑り止めタイヤチェーンを含む。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」おいて取得した登録第6485884号商標「CLASSIC SNOW SOCKS」(以下、本件商標)が、スペイン法人ISSE SAFETY S.A. が、本件商標の出願日以前より米国にて布製タイヤチェーンに使用する商標「CLASSIC」との関係において、商標法第53条の2の取消理由に該当するかが争われた審決取消訴訟において、特許庁の判断を支持し、本件商標の取消請求を棄却する判決を言い渡しました。
[知財高裁 令和7年(行ケ)第10016号/第1部本多裁判長]本件商標
日本カリフォルニアカスタム株式会社は、2021年5月20日、標準文字で書された商標「CLASSIC SNOW SOCKS」を、第35類「自動車並びにその部品及び附属品(布製の滑り止めタイヤチェーンを含む。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定して商標登録出願しました(商願2021-61380)。
本件商標は、特許庁の審査を経て、2021年12月14日に商標登録されました(商標登録第6485884号)。
代理店等による不正登録取消審判(商標法第53条の2)
スペイン法人ISSE SAFETY S.A.は、2023年7月10日、本件商標は商標法第53条の2に該当するとして、取消審判を請求しました。
第53条の2の取消審判とは、日本での登録商標が、パリ条約同盟国、WTO加盟国又は商標法条約締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の、当該権利に係る商標と同一又は類似し、当該権利に係る商品・役務とも同一又は類似するものであって、正当な理由なく、当該権利者の承諾を得ず、出願日前1年以内に代理関係にあった者又は現在その関係にある者によって出願された場合、審判により、登録を取り消す制度を言います。
特許庁は、2024年10月10日、以下のように述べ、審判請求を棄却しました(取消2023-300480号)。
『請求人は、「Classic」の文字からなる商標(以下、使用商標)について、使用主義を採用する米国において、商標登録がされていなくても使用の事実によって商標権が発生すると主張しているが、請求人が提出する証拠によっても、ウェブサイトや商品包装等に「Classic」の文字が付記的に表示されていることが確認できるにすぎず、これらの証拠をもって、使用商標が、パリ条約の同盟国等における商標に関する権利に係る商標であるとはいえない。したがって、請求人がパリ条約の同盟国等において商標(使用商標)に関する権利を有する者であったとする請求人の主張は、その前提を欠く。』
これに対し、スペイン法人ISSE SAFETY S.A.(以下、原告)は、『米国において、布製タイヤチェーンに使用商標を使用した原告の商品が遅くとも2010年末に流通しており、その状況は現在にいたるまで変わっていない。また、同商品は、「Classic」を大きく表示した商品包装の態様で遅くとも2015年前半には流通していた。このように、原告は、本件商標の出願日以前から、布製タイヤチェーンに使用商標「Classic」を誠実に悪意なく、採択・使用しているのであり、商標としての機能を発揮する態様での使用であるから、米国においてコモン・ロー上の商標権が発生している。にもかかわらず、「Classic」の部分を付記的に表示されているにすぎないと判断した本件審決には誤りがある。』として、2025年2月14日、知財高裁に提訴しました。
知財高裁の判断
裁判所は、原告が提出した使用商標に関する証拠について、以下のとおり認定した上で、『原告が主張する使用商標は法53条の2に規定する「商標に関する権利」に該当せず、原告は、同条の「商標に関する権利を有する者」に該当しないから、原告の主張は理由がない。』と判断しました。
- 原告の英語版、スペイン語版及び日本語版のウェブサイトでは、「イッセ・スノーソックス」は原告が開発・製造する布製タイヤチェーンであり、そのうち、代表的なスノーソックス(標準モデル)を「Classic Model」、制動性・耐久性に優れた高品質モデルを「Super Model」、大型車両向けのモデルを「Truck Model」と表示して、販売。
- 原告の所有に係る米国商標登録第3838639号にて提出された商標見本のウェブサイト写真には、原告商品一覧表の上部に、原告のハウスマークが大きく表示され、布製タイヤチェーンの商品種別として「Classic C-600」等と記載。
- 米国で、原告商品を販売する「ECS Tuning」のSNSサイトに、原告の布製タイヤチェーンについて、3種類のスタイルと2種類のサイズが、それぞれ「Classic C-600」「Super C-500」「Super ECO C-700」と紹介。
- 米国の小売サイトにおいて、布製タイヤチェーンの種類として「Classic」及びタイヤサイズが記載された原告商品や、商品包装の下部に「Classic」と記載された原告商品が販売。
- 以上の認定事実によると、布製タイヤチェーンとの関係で出所識別標識として機能している標章は、原告のハウスマーク又は原告の略称「ISSE」であって、「Classic」の文字は、原告が販売する布製タイヤチェーンが有しているグレードや性能、装着しようとしているタイヤへの適合を判断するための用途や品質を表示する文字として機能しているものであって、出所を識別するものとして機能しているものとはいえず、商標としての機能を発揮する態様で使用しているとは認められないから、米国のコモン・ロー上の商標権が発生していると認めることはできない。
