知財高裁:「allstar」は一種の造語であり、二語から構成される「All Star」にあらず

[Newsletter vol. 234]


知的財産高等裁判所は、令和7年9月25日、国際登録第1499530号商標「allstar」(図形付き)は、先行登録第431660の1号商標「All Star/オールスター」と類似するとした特許庁の不服2023-650052号審決の妥当性が争われた審決取消訴訟において、本願商標は、商標法4条1項11号に掲げる商標登録を受けることができない商標に該当せず、これと異なる特許庁の判断には誤りがあるとして、原審決を取り消す判決を言い渡しました
[知財高裁 令和7年(行ケ)第10033号/第2部清水裁判長]


本願商標

 ドイツ法人allstar Fecht-Center GmbH & Co. KGは、2019年7月9日、マドプロ国際登録を利用して、下掲の態様からなる商標「allstar」を、第8類、第25類、第27類及び第28類に属するフェンシング関連商品を指定して、日本に商標出願しました(国際登録第1499530号)。


引用商標

 特許庁審査官は、美津濃株式会社が所有する先行登録第431660の1号商標「All Star/オールスター」(第28類:運動用具(体育用機械器具・体操用機械器具・スターターピストル・スケート靴を除く。))と類似するとして、商標法4条1項11号により、令和5年3月15日付けで本願商標を拒絶しました。


拒絶審決

 また、特許庁の審判官合議体は、令和6年12月16日、以下のように述べ、両商標は類似すると判断しました(不服2023-650052号)。

 『本願商標及び引用商標は、両者の外観を比較すると、その構成文字である「allstar」と「all star」は、共通する語を表しており、記憶される印象において互いに極めて似通ったものとなる。また、その構成文字に相応して、いずれも「オールスター」の称呼及び「オールスターの」程度の観念を生じる。そうすると、本願商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念を総合して全体的に考察すると、同一又は類似の商品に使用するときは、出所について誤認混同を生じるおそれがあるから、類似の商標と認められる。また、本願商標の指定商品中第25類、第27類及び第28類は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含む。したがって、本願商標は、商標法4条1項11号に該当する。』

 これに対し、出願人は、原審決の判断には誤りがあるとして、本年4月15日、知財高裁に提訴しました。


知財高裁の判断 

 裁判所は、以下のとおり認定した上で、本願商標は、引用商標とその外観を大きく異にするものであり、商標法4条1項11号の「他人の登録商標に類似する商標」には該当しないから、原審決は取り消されるべきと判断しました。

  1. 本願図形部分は、本願文字部分と一体となり、全体として一定の観念を想起させることが予定されている。本願図形部分は、本願商標の特徴的な部分を構成しているから、本願文字部分だけが取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として特に強く支配的な印象を与えるものとまでいうことはできない。また、本願図形部分はフェンシングの剣の鍔と柄を模したものであるから、本願図形部分からおよそ出所識別標識としての観念が生じないと認めることもできない。一般に商標は、その構成部分全体によって他人の商標と識別すべく考案されており、みだりに分離観察すべきではないことを踏まえると、本願図形部分と本願文字部分とを分離することは、取引上不自然であって、これを分離観察することは相当ではない
  2. 外観を比較すると、本願商標には、本願図形部分が存在し、本願図形部分と本願文字部分の白抜き部分が一体となってフェンシングの剣を模した図形が含まれていること、本願商標の本願文字部分は「allstar」の「all」と「star」との間にスペースがない一語となり、かつ、全て小文字になっているのに対し、引用商標においては「All」と「Star」との間のスペースがあり、かつ、頭文字が大文字になっていること、本願文字部分の字体はポップ体風で線の太さが均一なデザインで構成されているのに対し、引用商標の欧文字の字体は手書きの筆記体風で線の太さも均一ではないこと、本願文字部分にはカタカナのふりがなは付されていないが、引用商標についてはカタカナのふりがなが付されていることといった差異があり、取引者及び需要者に与える印象において顕著な差異があるものと認められる。したがって、両者の外観が類似していないことは明らかである。
  3. 本願商標のallstarは一語であり、引用商標のAll Starは二語から構成されている。新英和大辞典には、複合語の第1構成要素であることを示す「all-」が用いられた「all-star」の項目で、「スターぞろいの」という意味の形容詞が掲載されている一方、allstarの語は掲載されていない。したがって、allstarは一種の造語ということができる。「アルスター」との読み方はフェンシング関係者の間では相当程度定着しているものとはいえ、本願商標の指定商品の需要者又は取引者の間で「オールスター」の称呼が生じることを否定するには足りない。そうすると、本願商標は「アルスター」又は「オールスター」の二つの称呼を生ずるものであり、このうち「オールスター」の称呼は、引用商標の称呼と同一又は極めて類似する。
  4. 本願図形部分からは、本願文字部分の白抜き部分と一体となって、「フェンシングの剣」が想起されるから、結局、本願商標は全体として「フェンシングのオールスターの」という観念が生ずる。他方、引用商標からは、「オールスターの」という観念が生ずるにとどまるから、本願商標と引用商標は、その観念のすべてを共通にするものではない
  5. 本願商標は、引用商標と同一又は類似の称呼を生ずることはあるが、フェンシング関係者の間では、引用商標と異なる称呼である「アルスター」が相当程度定着している。また、両者の外観は大きく異なり、かつ、想起される観念についても、そのすべてを共通にするものではない。取引の実情としても、出所の識別については、指定商品に付された商標の外観が重要な役割を果たしていることが推認される。したがって、これを全体的に考察すると、本願商標は、引用商標との関係で、商品の出所に誤認混同をきたすおそれはないというべきであるから、引用商標に類似する商標ということはできない