Newsletter vol. 91をリリースしました。

特許庁:独プーマ社の主張を認め、「PUMA」と類似する「KUMA」の商標登録を無効取消

特許庁は、2019年10月10日、世界的に有名なスポーツブランドPUMAの文字ロゴを、『熊』に置き換えた商標「KUMA」ロゴ(商標登録第5661816号。以下、本件商標)の登録の有効性が争われた無効審判[無効2019-890021]において、ドイツ法人PUMA SE(以下、PUMA社)の主張を認め、以下の理由により、本件商標は、PUMA社の著名なPUMAロゴ(以下、引用商標)と類似するとして、本件商標の登録を無効とする審決を下しました。

両商標の第1文字が相違し、本件商標の第2文字「U」の曲線内側部分の一部に図形が施されているとしても、共に4個の欧文字が、垂直方向に肉太で線を強調し、縦長の書体で横書きされ、それらの文字全体で略横長の長方形を構成するようにロゴ化して表されており、文字つづりも、第2文字以降が配列も含め全てを同じくする共通性によって生じる共通の印象、すなわち、独特な書体からなる欧文字が略横長の長方形内にはめ込まれたような態様であるとの印象をもって、これを顕著な特徴として需要者に認識させる。したがって、両商標は、外観上酷似した印象を与えるものということができ、相紛れるおそれがある
次に、第1音における相違があるが、第1音の母音が「u」である点と第2音が「マ」であるという点が共通するところ、全体が短い構成音数の称呼において、前半における相違が称呼全体に及ぼす影響は決して小さくはないといえる一方、後半における共通性も称呼全体に及ぼす影響が少なからず認められる。よって、両者は、称呼上全く異なるとはいえないものの、相当程度聴別し得るものである。
さらに、本件商標からは常に特定の観念が生じるともいい得ないものであるから、引用商標とは、観念上、比較できないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛れるおそれがあるとまではいえず、観念において比較できないものであるが、外観においては、その特徴的な態様が看者に強く印象づけられ、酷似した印象を与えるものであって、相紛れるおそれがあるものであるから、本件商標と引用商標の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、前述の外観上の特徴を有する引用商標の周知著名性に係る事情をも勘案して、全体的に考察すれば、両商標は、類似の商標といえるものである。

先に争われた異議申立事件(異議2014-900177)ではPUMA社の主張は退けられましたが、弊所が代理人として対応した本件無効審判において、特許庁は一転してPUMA社の主張を認め、KUMA商標を排除することに成功しました。

特許庁:「EYE PHONE」は、米国アップル社の「iPhone」と出所混同のおそれなし

特許庁は、米国アップル社が、第9類「眼鏡」における登録第6099794号商標「EYE PHONE」(本件商標)の使用は、アップル社の著名なスマートフォン「iPhone」(引用商標)と誤認混同を生ずるとして、異議を申し立てていた事件で、以下のように述べてアップル社の主張を斥け、本件商標の登録を維持する決定を下しました。[異議2019-900030]

両者は,外観において,2語と1語という構成語数に差異を有し,さらにつづり字の比較においても文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において,EYE」と「i」の文字の差異を有するから,両者を離隔的に観察しても,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。両者は「アイフォーン」又は「アイフォン」の称呼を共通にする。観念においては,前者が特定の観念を生じないのに対し,後者は「(申立人のブランドとしての)iPhone」の観念を生じさせるものであるから,相紛れるおそれのないものである。そうすると,本件商標と引用商標は,称呼を共通にするものの,外観及び観念において相紛れるおそれのないものであるから,両者の外観,称呼及び観念によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであって,類似性の程度は低いものである。

申立人商品の出荷台数及びシェアからすれば,引用商標の周知著名性の程度は高い。引用商標の構成文字「iPhone」は既成語ではないものの,該文字は「電話」を意味する英語として親しまれている「Phone」の語の語頭に,欧文字1字「i」を結合してなるにすぎないものであるから,独創性の程度は高いといえない

「眼鏡」と「スマートフォン」は,両者の性質,用途及び目的が異なることは明らかであり,両者の関連性の程度は低い両商品の一般的,恒常的な取引の実情において,生産者,販売者など取引者が異なることは明らかであり,また,両商品の用途,目的が異なることから,需要者の範囲も異なる

上記に照らし,本件指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として判断すれば, 本件商標は,商標権者がこれを本件指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはないものと判断するのが相当である。そうすると,本件商標は,商標権者がこれを本件指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはない