大阪地裁:「S.IW波」は上下二段の結合商標「S.IW波/Super.Inter Widened Wave」を非侵害

[Newsletter vol. 254]


 大阪地方裁判所は、本年7月30日、株式会社with(被告)が販売する美顔器「MAGIC LIFT」の取扱説明書やウェブサイトにおける「IW波」及び「S.IW波」(被告標章)の使用が、株式会社ジェイクラフト(原告)が所有する登録第6762170号商標「IW波/Inter Widened Wave」(原告商標1)、登録第6801325号商標「S.IW波/Super.Inter Widened Wave」(原告商標2)を侵害するかが争われた商標権侵害訴訟において、被告標章は原告商標とは類似しないとして、原告の請求を棄却する判決を言い渡しました。
[令和7年(ワ)第10447号 不正競争行為差止等請求事件、大阪地裁第21民事部 松川裁判長]


原告商標

 株式会社ジェイクラフト(原告)は、令和5年8月9日、下掲の上下二段表記の原告商標1及び2を、第10類「業務用美容マッサージ器, 医療用機械器具, 治療用機械器具, 家庭用電気マッサージ器」、第11類「美容用又は衛生用の家庭用電熱用品類」を指定して、特許庁に商標登録出願しました(商願2023-088912, 2023-088913)。


 特許庁は、原告商標1を令和5年12月13日、原告商標2を令和6年5月2日に、それぞれ登録しました(原告商標1:登録第6762170号、原告商標2:登録第6801325号)。

 なお、原告は、自ら開発した特殊な電気波形を「IW波(Inter Widened Wave)」と名付け、平成17年以降、その出力を機能として備えた美顔器である商品名「セルキュア」「ハンディマジック」「ルーナノーバ」「CCS」「ビューティーキュア」「ハリウッドライン」等の各商品(原告商品)を、順次、発売。原告のウェブサイトには、『2005年に鋭意研究の末に見出した独自の特許取得済み技術、この低周波を「IW波(Inter Widened Wave)」と名付け、低周波での活性化が期待できます。』と記載。また、原告商品の取扱説明書やのウェブサイト等、展示会のパンフレット、美容雑誌等において、原告商品が発する波形を「IW波」「I.W波」「I.W.波」「I.W.波(interwind wave)」「I.W波 Interwind Wave effect」「I.W.波(Inter Wind wave)」と記載


被告標章

 株式会社with(被告)は、判決文によると、遅くとも令和5年8月までに、商品名「MAGIC LIFT」の美顔器(被告商品)の販売を開始し、被告商品に同梱されているパンフレット、簡単ガイド及び取扱説明書において、被告商品が発する波形を「S.IW波」(被告標章2)と記載。具体的には、被告商品の取扱説明書の本文に、被告商品の各モードの操作方法として、「S.IW波モード S.IW波は主に表情筋のエクササイズに効果的で、独自開発のシングル回路で中周波をスイープさせます。ピリピリ感を抑えながらシワ改善、リフトアップ、むくみ・くすみの改善、フェイスラインの引き締めに効果が期待できます。」、被告ウェブサイトに、「IW波をさらに進化させた独自開発のS.IW波を採用。シングル回路で中周波をスイープさせることにより、IW波をさらに奥まで浸透させる波形を実現しています。お肌の細胞を活性化し、さらに深部にある筋肉の細胞を活性化しながら、ピリピリ感を抑えて肌に吸い付くような新感覚の表情筋エクササイズが実感できます。」と記載。


原告の訴え

 原告は、令和7年5月8日付け内容証明郵便にて被告標章の使用等の差止め、削除等及び損害賠償金の支払等を求めるも、被告から原告の要求に応じない旨の内容証明郵便が届いたことから、同年10月2日、本件訴えを提起し、不正競争防止法3条1項及び商標法36条1項に基づく被告標章の使用及び被告商品の譲渡等の差止めとともに、不正競争防止法4条及び民法709条に基づく1,2229,198円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を請求しました。


大阪地裁の判断(商標権侵害の成否)

 裁判所は、以下のように述べ、被告標章と原告とは非類似しないから、商標権侵害は成立しないと判断しました。

  1. 原告商標は、大きなフォントの「IW波」、「S.IW波」との文字(上段部分)と小さめのフォントの「Inter Widened Wave」、「Super.Inter Widened Wave」 (下段部分)の文字列の二段から成る結合商標であり、大きめのフォントで強調された上段部分が、下段部分の文字列のそれぞれの頭文字を取った略称となっている。このような構成に鑑みれば、原告商標は、上段部分と下段部分の結びつきが強く、需要者に対しても一体のものとの印象を与えるから、原告商標と被告標章の類否を判断するに当たっては、二段併記された原告商標を一連一体のものとして把握し、その構成部分全体を対比するのが相当である。
  2. 「IW波」は、ローマ字2字に「波」の漢字を組み合わせたものであり、それ自体に強い識別力が伴うものとはいえない。また、「S.IW波」は、それ単体としては識別力が強い単語とはいえない「Super」の頭文字としてのローマ字の「S」1字とピリオドが加わっているにとどまる一方、下段の「Inter Widened Wave」、「Super.Inter Widened Wave」の文字列は、辞書に掲載されるなど一般的に認知されている波の名称等ではなく、相応に強い識別力を有するものといえるから、文字の大きさの違いを考慮しても、上段部分が需要者に対して出所識別標識として強く支配的な印象を与えるなどということはない上、上段は下段の略称という関係性もあるのであるから、上段部分のみを分離して、商標の類否を判断することは許されない
  3. 原告商標と被告標章を対比すると、原告商標は上下二段表記の結合商標であるのに対し、被告標章はローマ字2文字(又は、ローマ字3文字、ピリオド)及び和文字1文字の組み合わせで、外観及び称呼上、類似しないことは明らかであるし、観念上も、両者は何らかの「波」であるという限りにおいて共通するものの、原告商標が「Super」「Inter」「Widened」といった英単語の意味内容に伴う観念を想起させるのに対し、被告標章のローマ字部分は特定の意味内容を有するものではなく、両者は観念においても相違するものといえる。したがって、原告商標と被告標章は、類似しない

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