[Newsletter vol. 250]
知的財産高等裁判所は、2026年6月10日、株式会社ケイジェイシーが開発・販売する乳幼児ないし子供用フォーク「エジソンママ」の立体形状(商願2022-73752号)の自他識別力(商標法第3条第1項第3号)及び特別顕著性(同法第3条第2項)を否定した特許庁の審決(不服2023-10435号)の是非が争われた審決取消訴訟において、特許庁の判断を支持する判決を言い渡しました。
[令和7年(行ケ)第10120号 審決取消請求事件、第2部 森冨裁判長]
本願商標
株式会社ケイジェイシーは、第8類商品「乳幼児及び子供用の食卓用フォーク」を指定して、2022年6月27日、フォークの立体形状を表した右掲の商標を特許庁に出願しました(商願2022-83752)。

判決によると、同社は、平成22年1月頃から本願商標に係る商品(本件商品)の開発を進め、同月20日にフォークヘッドの形状に関する実用新案登録出願をした後、本件商品の販売を開始。令和4年までの販売数量は約491万本に上り、市場占有率(販売数量/出生者数)は、54%~76%の間で推移。電子商取引サイトのランキングにおいて1位を含む高順位を獲得。また、テレビCMや雑誌広告、展示会への出展等により、需要者は、本件商品の形状の特徴により、何人かの業務に係る商品であるか認識し、理解することができるとして、たとえ、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、同2項(特別顕著性)が適用されると主張しました。
特許庁の判断(拒絶審決)
特許庁審判官合議体は、2025年10月16日、以下のように述べ、本願商標は商標法3条1項3号に該当し、第2項の要件を具備しない、と判断しました。
- 本願商標は、全体的に厚みのある太い柄で、柄にくびれ部分を有しており、フォークヘッドの指は4本で、各指に凹凸が形成されている立体的形状からなる。全体的に厚みのある太い柄や、柄にくびれ部分を有して握りやすい形状になっていたり、フォークヘッドの指が4本で、各指に凹凸が形成されている等のフォークが取引されている事実が見受けられる。そうすると、本願商標の立体的形状は、指定商品に採用し得る形状の一形態を表したものと容易に認識され、これに接する取引者、需要者が、その商品の機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものである。
- 本件商品には、フォークの柄に「EDISON」又は「EDISOnmama」の記載(刻印)があり、パッケージされた状態で常に当該ブランド名の文字とともに使用されていることよりすれば、需要者は、当該文字を含めて、同業他社の商品とを区別しているといえ、本願商標の立体的形状が需要者の目につき易く、強い印象を与えるものであったというに足る事情は見いだせない。
本願商標の認知度に関するアンケート調査
出願人は、同年11月27日、特許庁の拒絶審決を不服として、知財高裁に取消訴訟を提起し、2026年1月9日~10日にかけて、25歳から44歳までの男女のうち1歳から6歳までの子と同居する親1,033人を対象にアンケート調査を実施した結果を証拠資料として提出。
結果は、本件商品の写真のみから原告のブランド名・メーカー名を回答した者は20.1%、他社ブランド名の回答者は「レック(LEC)」0.4%、「ピジョン(Pigeon)」5.1%、「思い出せない/見たことはある/わからない」は0.9%、「全くわからない」が67.2%。「全くわからない」と回答した者に、原告を含む10社のブランド名等と共に、「この中にない」、「わからない」との選択肢を示した場合、原告ブランド名等の回答者は4.6%、「レック(LEC)」0.0%、「ピジョン(Pigeon)」5.9%、「わからない」は44.1%%でした。
知財高裁の判断
1. 自他識別力(商標法3条1項3号該当性)
立体的形状からなる商標の商標法3条1項3号該当性は、当該商標が指定商品に使用された場合に、需要者によって、当該商品の形状その他の特徴を表示するものとして一般的に認識されるものであったか否かにより判断すべきであること、そして、需要者から見て、当該形状が商品に必要とされる機能や美観に資することを目的として選択されたものと把握し得る範囲のものであれば、当該商標は、商品の形状その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというべきである。本願商標の立体的形状が商品の機能上必然的な形状でないことや、市場における一般的な形状でないことにより、直ちに本願商標の同号該当性が否定されるものでもない。
2. 特別顕著性(商標法3条2項適用性)
本件商品が一定の範囲の需要者に認識され、高く評価されていることは認められるものの、具体的な販売数量や市場占有率は明らかでなく、広告宣伝の期間、規模も限定的なものにとどまる。本件アンケート調査の結果、本件商品の写真のみから原告のブランド名等を回答した者は20.1%にとどまり、「全くわからない」と回答した者に原告を含む10社のブランド名等を示した場合においても、原告のブランド名等を回答した者は4.6%であるのに対し、「わからない」と回答した者はなお44.1%に上るというのであって、本件商品の形状は、当該商品に必要とされる機能に資することを目的として選択されたもので、それ自体、強い自他商品の識別力を有するものではないことをも総合考慮すると、本願商標は、使用された結果、需要者において、自他商品の識別力を有するに至ったとまで認めるのは困難というほかなく、したがって、本願商標は商標法3条2項所定の要件を具備するものではないというべきである。
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