[Newsletter vol. 249]
大阪地裁は、2026年5月29日、人気すしチェーン「すじざんまい」を展開する株式会社喜代村が販売するオリジナル特別純米酒の銘柄「喜び」(以下、被告製品)が、第33類商品「日本酒」を指定する商標登録第889339号「よろこび」、第4938994号「よろこび」、第5095211号「よろこび/喜」を侵害するかが争われた裁判において、被告製品の製造元及び販売元には共同不法行為が成立するとして、被告製品の差し止め、及び、連帯して3,127万8,308円の損害賠償の支払いを命ずる判決を言い渡しました。
[令和6年(ワ)第12150号 商標権侵害差止等請求事件、大阪地裁第26民事部 松阿彌裁判長]
本件商標
初光酒造株式会社は、代表者名義で、指定商品「第33類 日本酒」他において、以下の態様からなる文字商標を出願、登録し、同社が販売する日本酒において使用しています。


被告製品
高橋酒造店は、平成16年11月頃から令和6年9月まで、喜代村から依頼を受け、喜代村における専売品として、瓶詰めされた被告製品を製造し、酒屋を介して喜代村に納入。被告製品には被告標章を含む商品ラベルが貼付。喜代村は、「すしざんまい」において、メニューに「喜び(小)」、「喜び(300ml)」と記載して、来店客に被告製品を提供。また、すしざんまいのウェブサイトには、被告製品の写真が「すしざんまいオリジナル特別純米『喜び』の文字とともに掲載されていた。

判決文によれば、平成16年12月~令和6年9月の被告製品の売上高(税込)は、15億6,391万5,397円(推計)
大阪地裁の判断
1. 侵害論
本件商標と被告標章は、外観には一定の差異があるものの、取引者や需要者にとっては、「よろこび」の漢字による表記が「喜び」であることは常識に属することであって、観念及び称呼は共通する。被告製品が、喜代村の「喜」に由来するものと連想する可能性がないとはまでいえないが、そのような連想が取引上常に想定されるとはいえず、本件商標と観念が共通することが左右されるものではない。「よろこび」ないし「喜(よろこび)」との表現を日本酒(指定商品)の商品名とすることがありふれているとも評価できず、需要者にとって、通常の識別力を有することに疑いはない。また、初光酒造は和歌山県の酒蔵であるが、原告製品は、初光酒造のウェブサイト上で販売されており全国で購入できること、被告製品が提供される「すしざんまい」は東京を中心に全国的に展開されていることからすると、出所の誤認混同が生じることも明らかである。以上のことからすると、本件商標と被告標章とが日本酒に使用された場合には、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるから、被告標章は本件商標と類似する。したがって、被告らによる、日本酒(被告製品)に「喜び」の標章並びに被告標章を付し、又は同各標章を付した日本酒(被告製品)を製造販売等することなどの被告各標章の使用行為は、原告の本件各商標権を侵害する。
2. 共同不法行為
高橋酒造店は、喜代村から依頼を受けて、被告標章を含む商品ラベルを付した被告製品を製造し、酒屋を介して喜代村に納入し、喜代村は、高橋酒造店から、酒屋を介して被告製品の納入を受け、「すしざんまい」において、メニューに被告標章を付して、来店客に被告製品を提供していたのであり、被告らは、共同して本件各特許権を侵害する行為を行っていたものと認められるから、被告らには共同不法行為(民法709条、719条1項前段)が成立する。
3. 損害論
「第33類 ビールを除くアルコール飲料」に係る商標権のロイヤルティ料率について、令和7年頃のアンケート調査の平均値は2.8%、平成22年頃の調査の平均値2.0%との結果であったことが認められる。また、喜代村が、「すっきりしてて飲みやすいすしざんまいオリジナル特別純米酒「喜び」がおすすめ」、「パッケージに印刷されている、「喜び」の文字はすしざんまい社長が書いたものです」などと記載し、「喜び」を強調して積極的に宣伝していること、本件訴訟前の交渉段階では、喜代村は原告に対し、本件各商標権の譲渡や使用許諾を打診するなどしていたことからすれば、被告標章を被告商品に用いたことによる売上げ及び利益への貢献は、「すしざんまい」が相応の著名性を有することを踏まえても、少なくとも一定程度はあったものと認められる。さらに、被告製品は、「すしざんまい」の来店客に提供されているものであり、一般の市場において取引されているものではないから、原告製品と被告製品が市場において競合している事実は認められない。以上の事情に加えて、商標法38条4項の趣旨も参酌の上総合考慮すると、本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額に相当する額を算定する際の使用料率は、2%と認める。したがって、商標法38条3項により算定される原告の損害額は、3,127万8,308円と認められる。
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