知財高裁:リスのキャラクターの下に書された「リッキー」の文字を要部抽出した類否判断を容認

[Newsletter vol. 246]


知的財産高等裁判所は、令和8年3月24日、擬人化されたリスを思わせる動物の図形の下に「リッキー」の文字を横書きした構成からなる登録第6517882号商標(引用商標)と、標準文字で書された「リッキー」の文字商標(本願商標)とは類似するとして、商標法第4条第1項第11号により本願商標の登録を拒絶した特許庁の不服2024-12999号審決(原審決)の妥当性が争われた審決取消請求において、特許庁の判断を肯定する判決を言い渡しました。
[知財高裁 令和7年(行ケ)第10102号/第3部中平裁判長]


本願商標

 原告(中国電力株式会社)は、令和5年9月8日、標準文字で表した「リッキー」の文字を、第16類「文房具類,印刷物」等を指定して、商標登録出願しました(商願2023-100400)。


引用商標

 特許庁審査官は、令和6年5月28日、本願商標は、リスの特徴を誇張し、服を着て蝶ネクタイをし、手に虫メガネを持つなど擬人化したリスを思わせる動物の図形の下に「リッキー」の文字を横書きした構成からなる下掲の登録第6517882号商標(引用商標)と、同一の称呼「リッキー」を生じ、観念において明確に区別することができないこと、いずれも「リッキー」の文字を構成中に有すること、外観においても共通点が認められることから、両商標は類似するとして商標法第4条第1項第11号により拒絶しました。

 原告は、昨年8月9日、拒絶査定不服審判を請求し、引用商標は、商標法第6条第1項に規定する「一商標一出願の原則」に違反することなく登録されている以上、引用商標の「リッキー」の文字部分の一部抽出が許されるとすれば、二商標の保護を一出願の費用で受ける不公平を招き、また、キャラクター図形の近傍にキャラクター名称を表示する一般的・恒常的な取引実情等を踏まえ、引用商標の構成全体より、下段の文字部分の名称のキャラクター図形の観念を生じ、称呼上も観念上も不可分的に結合している以上、キャラクター名称とキャラクター図形を分離することは許されず、仮に、分離することが許されたとしても、中心的な構成要素として強い存在感と訴求力を発揮する上段のキャラクター図形を要部とすることが許されるのみで、下段のキャラクター名称をもって、当然に要部とすることが許されないことから、本願商標と引用商標は非類似と主張しました。


原審決(特許庁の判断)

 特許庁は、昨年9月24日、以下のように述べ、原査定と同じく、本願商標を拒絶する審決を下しました。

  1. 引用商標の図形部分と文字部分は、図形と文字の差異に加え、色彩も異にし、それぞれ重なり合うことなく、相当程度の間隔を空けて上下に独立して表されていることから、視覚上、明確に分離して看取し得る。図形部分と文字部分とは、観念上のつながりはなく、両者を常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだせない。そうすると、図形部分と文字部分は、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえない。してみると、図形部分と文字部分とは、それぞれ独立して自他商品役務の出所識別標識の機能を有しており、その構成中から文字部分を要部として抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許される
  2. 商標の構成部分の一部を抽出することは、商標の類否を判断するための一つの手法であるから、一商標一出願の原則とは別個のものであって、当該原則を潜脱するものではない

 原告は、令和7年11月4日、原審決の取消しを求め、知財高裁に審決取消訴訟を提起しました。


知財高裁の判断 

  • 図形部分は、リスを擬人化したものと思わせるものの、一般に親しまれた特定の事物を表したものとは認められず、特定の称呼や観念が生じるといった事情も見いだせないことから、図形部分と文字部分とは、観念上のつながりはない。その他、図形部分と文字部分とで、両者を常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだせない。そうすると、図形部分と文字部分は、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないから、引用商標は、その構成中の図形部分と文字部分が、それぞれ独立して自他商品役務の出所識別標識の機能を有しており文字部分を要部として抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許される
  • 図形部分は、我が国において広く知られ、親しまれたものではないから、特定の称呼や観念が生じない。「リッキー」の文字部分と称呼や観念における関連性はなく、当該キャラクター名称を表してなると直ちに認識、理解されることもない
  • キャラクター図形とその名称を一緒に配した事例以外に、キャラクター名が、それとは異なるブランド名と併記されているものもあり、キャラクター図形と何らかの文字が併記されていたとしても、必ずしもキャラクターの名称を示すものでもない
  • 引用商標は、その構成中、図形部分のほか、「リッキー」の文字部分が、独立した出所識別標識として強い印象を与える要部ということができる。そうすると、本願商標と引用商標は、引用商標の要部「リッキー」の文字部分の比較において、外観において近似し、称呼を共通にするものであるから、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、時と所を異にして両商標に接するときは、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり、類似する。
キャラクター図形とその名称からなる商標の要部認定が争点となりました。キャラクターという特殊性を考慮する必要はありますが、人気キャラクターより不人気キャラクターの方が商標権の効力範囲が広いようにも読め、結論に限らず色々と疑問に感じます。

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