特許庁:ヨネックスの2色商標、シャトルコックにおける特別顕著性により登録認容

[Newsletter vol. 235]


特許庁は、2025年10月21日、ヨネックスが1976年からバドミントンのシャトルコックに使用する青と緑の2色の組み合わせについて、長年にわたる使用の結果、需要者の間に相当程度認知され、同社の出所識別標識たり得る特徴として広く認識されるに至っているとして、商標法第3条第2により、色商標の登録を認める審決を下しました。[不服2019-17481号審決]


本願商標

 ヨネックス株式会社は、2019年9月6日、青色(Pantone 2935C)と緑色(Pantone 355C)の組合せからなる商標(配色比率50%:50%)を、第28類商品「運動用具,バドミントン用具」他を指定して、特許庁に商標登録出願しました(商願2019-118815)。 

 審査官は、2022年7月27日、本願商標は、単に商品の特徴を普通に用いられる方で表示するに過ぎないとして、商標法第3条第1項第3号により拒絶しました。また、出願人による本願商標の長年にわたる使用や市場シェア1位を踏まえ、本願商標の色彩のみをもって出願人の商品であると識別している取引者、需要者がある程度いることは認められるものの、自他商品識別標識として認識していない者も少なからずいることから、本願商標は、一般的な需要者が特定の出所を認識するに至っているとはいい難いとして、第3条第2項の適用を認めませんでした。

 これに対し、出願人は、同年11月1日、拒絶査定不服審判を請求しました。なお、本願指定商品は、最終的に第28類「シャトルコック」と補正されました。


登録審決

 約3年に及ぶ審理の結果、特許庁審判官合議体は、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものの、以下のように述べ、同条第2項の要件を具備するとして、拒絶査定を取り消す審決を下しました。

  •  本願商標は、遅くとも1976年から48年以上にわたり継続して、シャトルコックの収納筒に、また、1981年頃から、シャトルコック本体のコルク部分の内側にも同一視できる色彩を使用しており、請求人のホームページ、商品カタログ、インターネット記事情報、雑誌、新聞及びテレビ番組などにおいて、商品写真を伴う形で、紹介。使用商品は、オリンピック、世界選手権、全英オープンをはじめ、数多くのバドミントンの国際試合の公式球に採用。
  •  使用商品は、日本全国各地の約1,000店のスポーツ用品量販店及び専門小売店、請求人ショールーム、オンラインショップにて販売。
  •  株式会社矢野経済研究所の「スポーツ産業白書」によると、請求人シャトルコックの国内出荷金額は、2009年から2019年の11年間、連続して業界1位、その間の市場占有率は、およそ70%~80%。また、国内出荷金額、市場占有率は、2022年が43億円、86.0%、2023年が47.3億円、84.5%%で業界1位。2位の者の占有率:1.3~1.4%。
  •  株式会社インテージを通じて行ったアンケート調査結果によれば、日本全国に居住する15歳~59歳の男女で、現在又は過去にバドミントン・テニスを行っている・いた者1,053名に、本願商標に相当する色彩の画像を示して、思い浮かぶ企業を自由回答式で尋ね、次に同様の質問を多肢選択式で尋ねた結果、「テニス(ソフトテニス含む)・バドミントン両方の経験者」(553人)においては、自由回答式で42.68%、自由回答式の正解と不正解のうち選択式で請求人を回答した者を合わせると57.87%。また、「バドミントンのみの経験者」(321人)においては、自由回答式で41.12%、自由回答式の正解と不正解のうち選択式で請求人を回答した者を合わせると56.39%
  •  上記認定事実によれば、請求人は、本願商標と同一視できる使用商標を、遅くとも1976年から現在まで継続して使用商品に使用しており、市場におけるシェア及び売上げについても、長年極めて高いことが認められる。使用商品には、ハウスマークの文字が付されているものも多いが、使用商品や、商品カタログ、イベント・店舗等の装飾など、色彩の割合が多く顕著な態様で用いられている。加えて、全国のバトミントン経験者に対して行われた本件アンケート調査によれば、本願商標に相当する色彩から、請求人との関連を回答できたのは、選択式の回答も考慮すれば6割近い
    •  そうすると、本願商標の色彩は、請求人による長年にわたる使用の結果、その指定商品である第28類「シャトルコック」に係る需要者の間において、相当程度認知され、請求人に係る出所識別標識たり得る特徴として、広く認識されるに至っていると認められる。したがって、本願商標は、請求人による使用の結果、需要者が何人か(請求人)の業務に係る商品であることを認識することができるもので、商標法第3条第2項の要件を具備する