[Newsletter vol.226]
知的財産高等裁判所は、令和7年5月29日、第11類「電球類及び照明用器具」他を指定商品とする登録第6633183号商標「スカイランタン」(以下、本件商標)は当該商品との関係で自他識別力を欠くとして、商標法第3条第1項第3号により登録を無効とした特許庁の無効審決(無効2023-890071号)の是非が争われた審決取消訴訟において、特許庁の判断を支持し、本件商標権者の訴えを棄却する判決を言い渡しました。[知財高裁 令和6年(行ケ)第10110号/第2部清水裁判長]
本件商標
株式会社エクスプラウドは、2021年12月3日、標準文字からなる商標「スカイランタン」を、第11類「電球類及び照明用器具,LED照明用器具,クリスマスツリー用電気式ランプ,ろうそく式ランタン,電気式ランタン,LED式ランタン,祭りの飾り用飾りランプ,祭りの飾り用ひも状のライト,あんどん,ちょうちん」を指定して、特許庁に出願しました(商願2021-150729)。審査において商標法第3条第1項第3号の拒絶理由が通知されましたが、特許庁は、2022年10月27日に設定登録しました。
無効審判
株式会社スターリーナイトカンパニーは、2023年8月31日、本件商標登録の無効を求め、特許庁に無効審判(無効2023-890071号)を請求しました。同社は、「七夕スカイランタン」の文字商標を登録(第35,41類)しており、それに対して、株式会社エクスプラウドが、2021年10月21日に登録第6437078号商標「スカイランタン」(第35類)に基づき異議を申し立てていたことから(異議2021-900377号/維持決定)、両社の間で、商標トラブルがあったものと思われます。
無効審決(特許庁の判断)
特許庁は、2024年11月25日、次のように述べ、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当するとして、登録を無効としました。
『「スカイランタン」の文字は、「底面に開口部があり、中に明かりがともされた薄い膜でできた略円筒形の袋状のものであって、これを夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむイベント用品」(以下、本件商品)の一般名称を表したものといえ、本件商品は、中に明かりをともすものであるから、灯籠、行灯(あんどん)、ランタン、ちょうちんなどと説明されることが多いといった事情がある。本件商標権者が運営する日本スカイランタン協会も、本件商品をランタンとして説明している。そして、本件商標の指定商品は、いずれも照明を目的とした商品であって、ランタン、あんどん、ちょうちんなども含まれるものである。そうすると、「スカイランタン」の文字(語)が本件商標の指定商品に使用された場合には、その取引者又は需要者に対して、「スカイランタン」として使用する又は使用できる商品であるといった商品の品質又は用途を表したものと認識されるとみるのが相当である。してみると、「スカイランタン」の文字からなる本件商標は、指定商品との関係において、その商品の品質又は用途を表示するものとして取引に際し必要適切な表示であり、指定商品に使用された場合には、その取引者又は需要者によって、商品の品質又は用途を表示したものと一般に認識されるものというべきである。また、本件商標は、標準文字で表してなるものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることが明らかである。したがって、本件商標は、商品の品質又は用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならない』

株式会社エクスプラウドは、これを不服として、同年12月25日、知財高裁に原審決の取消しを求める訴訟を提起しました。
知財高裁の判断
知財高裁は、原審決の判断に誤りはないとして、以下のように述べ、原告の訴えを棄却しました。
- 証拠及び弁論の全趣旨によれば、「スカイランタン」の語は、本件商標の登録査定日において、本件商品又はこれと同種の商品であって、夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむための商品の一般名称であったと認められる。
- 本件商標の指定商品のうち、「電球類及び照明用器具、LED照明用器具、ろうそく式ランタン、電気式ランタン、LED式ランタン、あんどん、ちょうちん」については、主として照明を目的とした商品と認められ、それ自体が本件商品等であるとはいえないが、本件商品等のように、照明の効果を利用した飾り等としても用いることが可能なものである。 他方、「スカイランタン」を一般名称とする本件商品等は、その形状から、一種のちょうちん、灯籠、行灯(あんどん)、ランタン(中国風ちょうちん)と説明されることもあり、実際にそのような商品の性質も有している。そうすると、本件商標が前記指定商品について使用された場合、その取引者又は需要者において、当該指定商品の出所表示というよりも、その商品の品質、用途、形状を表示したものと一般的に認識されるものと認められる。
- 本件商標は、本件商品等の一般的名称として定着している「スカイランタン」を標準文字で表したものであって、これを本件商標の指定商品について使用したときは、その商品の品質、用途、形状を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に当たるということができる。 このような表示は、本件商標の指定商品との関係で、何人もその使用を欲するものであり、特定人にその独占使用を認めることは公益上適当ではないのみならず、自他商品識別力を欠くものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法3条1項3号に該当するから、この点に関する本件審決の判断に誤りはない。