[Newsletter vol.223]
特許庁は、先月、Kawasakiオートバイの「グリーン」、楽天モバイルの「ピンク」の単色商標の識別力が争われた拒絶査定不服審判において、いずれも、使用された結果、需要者が、出願人の業務に係る商品・役務であると認識することができるとはいえないとして、単色商標の登録を拒絶する審決を下しました。[不服2022-11189号審決、不服2023-2164号審決]
色彩のみからなる商標(色商標)
色商標の登録制度は、10年前の2015年4月1日に出願受付が開始され、これまでに589件出願されましたが、特許庁において登録が認められたのは、僅かに11件(うち2件は防護標章登録。登録率:1.9%)しかなく、いずれも2色以上からなるもので、単色での登録例は未だありません。

Kawasaki「グリーン」
川崎重工業(現出願人:カワサキモータース)は、2015年4月1日、第12類商品「二輪自動車」を指定して、ライムグリーン色(R105, G190, B40)のみからなる色商標を出願しました(商願2015-30667)。商標法3条1項3号の拒絶査定に対する不服審判を請求しましたが(不服2022-11189号)、特許庁は、『同系色が、二輪自動車の車体等の色彩として多数採択されている実情』を踏まえ、商標法3条1項3号に該当する。また、『2003年乃至2017年の請求人商品の新車販売台数中、本願使用商品の販売台数が占める割合は、平均約23.4%であって、決して高いとはいえない』、『1975年乃至2018年の請求人商品のカタログにおける、本願商標が使用されている商品の車種数の占める割合は平均約37%にとどまる』、さらに、16歳~79歳の普通自動二輪・大型自動二輪免許を保有する男女約1,000人を対象のアンケート結果(本願商標を見たことがある回答者の90.5%が本願商標から思い浮かぶバイクメーカ名として請求人を回答。自動車・バイク業種従事者に限れば認知度は100%)について、『需要者には、本願商標の色彩を使用しているバイク、店舗又は広告を見たことがない者も含まれるため、本願商標を見たことがある回答者のみの結果が正しく需要者による認知度を反映しているとはいえない。「100%」のアンケート結果も、「n数(=33)が少ないため参考値レベル」であり、認知度を正確に示すものとはいえない。』として、『公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得していると認めることができないものであるから、商標法3条2項が定める「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品」であると認識できない』と判断しました。

楽天モバイル「ピンク」
楽天モバイル株式会社は、2020年3月12日、第38類役務「移動体電話による通信を利用した通信ネットワークへの接続の提供」他を指定して、ピンク色(R255, G0, B140)のみからなる色商標を出願しました(商願2020-27238)。商標法3条1項6号の拒絶査定に対して不服審判を請求しましたが(不服2023-2164)、特許庁は、『3大キャリア以外の事業者が役務の提供の用に供する物や役務の広告の装飾等にピンク色を使用している状況を考慮すると、ピンク色は当該分野における誰もがその使用を欲する色彩である』、また、15歳乃至65歳の全国の男女10,822人を対象とするアンケート結果について、『MVO提供事業が請求人を含む4社のみしかないという実情、また、既存の携帯電話会社のイメージカラーであることを説明した上で質問しているにもかかわらず、本願商標を見て請求人を想起した者が77.4%という結果は、決して高い数字とはいい難く、また、同業他社であるNTTドコモ(84.6%)、KDDI(93.3%)に比して低い集計結果からしても、当該アンケート調査の結果をもって、これらの事業者が色彩のみで区別、認識されていると判断することはできない』として、『本願商標は、使用された結果、請求人の業務に係る役務の出所を表示するものとして、又は自他役務の識別標識として認識されるに至っているということはできない』と判断しました。
