[Newsletter vol. 218]
知的財産高等裁判所は、令和7年1月30日、第35類「経営に関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供、経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理、市場調査又は分析」と、第35類「リサイクル品又は中古品の販売に関する情報の提供、中古品買取業者への中古品売却希望者に関する情報の提供、中古品売却希望者への中古品買取業者に関する情報の提供、その他の商品の販売に関する情報の提供」との類否が問題となった拒絶審決取消訴訟において、特許庁の判断を支持し、両役務は類似との判断を示しました。
[知財高裁 令和6年(行ケ)第10083号/第2部清水裁判長]本願商標
株式会社ばんそう(以下、原告)は、令和4年8月29日、以下の態様からなる商標「BANSO」を、第35類「経営に関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供,経営の診断又は経営に 関する助言,事業の管理,市場調査又は分析」(以下、本願抵触役務)を指定して、特許庁に出願しました(商願2022-99287。以下、本願商標)。

引用商標
特許庁は、本願商標は先行に係る登録第60890130号商標「BANSO」(以下、引用商標)と類似しており、また、本願指定役務は、引用商標の指定役務中、第35類「リサイクル品又は中古品の販売に関する情報の提供、中古品買取業者への中古品売却希望者に関する情報の提供、中古品売却希望者への中古品買取業者に関する情報の提供、その他の商品の販売に関する情報の提供」(以下、引用抵触役務)と類似することから、商標法第4条第1項第11号により、登録を拒絶しました(拒絶査定)。

拒絶審決(特許庁の判断)
原告は、これを不服として、令和5年10月20日に拒絶査定不服審判を請求しましたが、特許庁審判官は、令和6年7月23日、原査定を支持し、以下のように述べ、本願商標は商標法4条1項11号に該当すると判断しました(不服2023-17809号審決)。
『本願商標と引用商標は、観念において比較することができないが、外観において類似し(文字の綴り、「A」の文字の横棒を省略する図案化)、称呼において共通する(「バンソ―」「バンソ」)から、外観及び称呼によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は類似の商標である。
本願抵触役務と引用抵触役務は、役務の提供の目的、手段、場所、提供に関連する物品及び需要者の範囲が一致するから、これらの指定役務に同一又は類似の商標が使用された場合には、同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあり、類似の役務である。
よって、本願商標は、引用商標と類似する商標であり、かつその指定役務も引用商標の指定役務と類似の役務であるから、商標法4条1項11号に該当する。』
原告は、令和6年9月5日、本件拒絶審決の取消しを求めて提訴しましたが、知財高裁は、以下のように述べ、原審決を支持する判断を下しました。
知財高裁の判断
- 引用商標については、その文字部分及び図形部分の構成上の一体性の程度が低いものであり、その文字部分からは、出所識別標識としての称呼、観念が生ずるものと認められる一方、その図形部分は、出所識別標識としての称呼、観念は生じないものと認められ、引用商標の文字部分と図形部分が分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認めることはできない。したがって、引用商標については、その構成中「BANSO」の文字部分を分離、抽出し、これを要部として他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるというべきである。本願商標の要部である文字部分と、引用商標の要部である文字部分は、外観上も類似しており、称呼の共通性等を考慮すると、類似の商標というべきである。
- 本願抵触役務は、商業に従事する企業に対し、経営コンサルティングや事業管理、市場調査・分析結果等を提供する役務であるものと解される。また、引用抵触役務は、商業に従事する企業に対し、広く商品の販売や商品市場に関する情報を提供する役務であるものと解される。本願抵触役務と引用抵触役務とは、各役務により提供される情報が商品・市場に関するデータの提供とこれに基づく助言のような形で密接に結びついており、これらの役務が一体となって、経営コンサルタント業者や市場調査業者等の同一営業主により対象分野の各事業者に提供されている実情にあるものと認められる。そうすると、本願抵触役務と引用抵触役務とは、事業分野(経営支援)や需要者(企業)において共通し、同一営業主により提供されるものであって、それらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるというべきである。したがって、本願商標の指定役務は、引用商標の指定役務と類似するものというべきである。