世界が注目した日本の商標ニュース2024 / 第1位:エルメス・パッケージ色商標の拒絶判決

[Newsletter vol. 214]


今年、マークス英語ブログサイト「JAPAN TRADEMARK REVIEW」に掲載した日本の商標(法改正、審決・判決等)に関するニュース記事(計51本)の中で、海外からの反響・関心が高かったトップ10をご紹介します。


第1位エルメス・パッケージ色商標、拒絶審決取消訴訟知財高裁令和5(行ケ)10095判決

知財高裁は、仏エルメス社の商品パッケージにおけるオレンジと茶色からなる色商標について、自他識別力を欠いており、また、アンケート調査における認知度(純粋想起:39.2%、助成想起:44.4%)は自他識別力の獲得を認め得るとしつつも、広く一般消費者を対象としたものではないことから、色商標それ自体から「エルメス」ブランドを認識できるに至っていると即断できないとして、登録を拒絶した特許庁の判断を支持する判断を下しました。


第2位商標法改正:令和6年4月1日より、「コンセント制度」の導入

特許庁は、本年4月1日より、先行登録商標と抵触する拒絶理由に対する出願人の対応策として、新たに、先行商標権者から承諾が得られ、混同を生ずるおそれが認められない場合には、後願商標の登録を認める「コンセント制度」を導入しました。(なお、12月11日時点で、コンセント制度による国内登録例は1例もありません。by 特許庁)


第3位:COCOvsKOKO」異議申立異議2023-900250

第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授」における、商標「KOKO」と「COCO」の類似性が争われた異議申立てにおいて、特許庁は、称呼が同一であるとしても、外観及び観念において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標と判断しました。


第4位:COCOvsCOCOCHI」異議申立異議2023-900100

特許庁は、「COCO」がシャネルの香水の出所表示として有名であるとしても、「COCOHI」と「COCO」とは、外観、称呼及び観念において相紛れないものであるから、これらは非類似の商標であるとして、シャネル社の異議申立てを退けました。


第5位ZARAvsLAZARA」異議申立異議2023-900175

特許庁は、「ZARA」がアパレル需要者の間で一定程度認識されていても、「LAZARA」との類似性の程度が低く、出所混同のおそれはないとして、インディテックス社の異議申立てを退けました。


第6位COCOvsCOCOBABY異議申立/異議2023-900041

特許庁は、「COCO」がシャネルの香水の出所表示として有名だとしても、「COCOBABY」が子供服に使用された場合、混同のおそれはないとして、シャネル社の異議申立てを退けました。


第7位Chateau Mouton RothschildvsMOUTON無効審判無効2022-890079

特許庁は、「ムートン」の語及びその欧文字表記「MOUTON」がそれ自体単独でフランス・ボルドー産の高級ワインである著名なワインを認識させるほどに、ブランドの略称としての使用が定着し、周知著名性を獲得するに至ったとして、飲食料品の小売及びレストランサービスにおける商標「MOUTON」は、有名なワイン銘柄「Chateau Mouton Rothschild」と混同のおそれがあるとして、商標登録を無効としました。


第8位エルメス「バーキン」バッグ類似意匠、無効審決取消訴訟知財高裁令和5(行ケ)10113

知財高裁は、仏エルメス社の高級バッグ「バーキン」の形状を模した意匠登録について、意匠構成中の南京錠の部分の形状等がエルメスの先行登録商標と類似し、混同のおそれがあるとして、特許庁の無効審決を支持しました。


第9位:VALENTINO GARAVANIvsGIANNI VALENTINO異議申立/異議2022900274

特許庁は、「VALENTINO」のブランドとしての認知度は世界的に維持されており、今もなお我が国におけるアパレル分野の需要者・取引者の間で広く知られ、周知・著名であることから、本件商標は、欧文字中の「VALENTINO」が、取引者、需要者に強く印象付けられて特に注意を引き、支配的な印象を与えるものであって、自他商品識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。したがって、本件商標からは、要部である「VALENTINO」の欧文字に相応した「ヴァレンティノ」の称呼が生じ、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニのデザインに係る商品に使用されるブランド」の観念が生じる。また、図形部分についても、外観上相紛らわしいとして、「GIANNI VALENTINO」の登録を取り消す決定を下しました。


10シン・ゴジラ立体商標、拒絶審決取消訴訟知財高裁令和6年(行ケ)10047

知財高裁は、映画「シン・ゴジラ」に登場する人気怪獣ゴジラの立体的形状について、それ以前のゴジラ・キャラクターとは実質的に同一と認められないとしても、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる」に至ったかどうかの判断に際して、「シン・ゴジラ」に連なる映画「ゴジラ」シリーズ全体が需要者の認識に及ぼす影響を考慮することは、むしろ必要なことであり、回答者の64.4%が「ゴジラ」又は「シン・ゴジラ」と答えたアンケート結果を「極めて高い著名度が示された」として、 特許庁の判断を取り消す判決を言い渡しました。