特許庁: 9つの外国語を縦に並べた商標は、そのうちの1つの単語からなる商標とは非類似と判断
特許庁は、9つの欧文字の単語を縦に並べた態様の、いわゆる、「9段書き商標」(商願2017-101730、第25類:被服,履物等。以下、「本願商標」)と、そのうちの1つの欧文字「Antithesis」とその読み方を併記した態様からなる商標登録第5661343号(第25類:洋服, 履物等。以下、「引用商標」)とが類似するかが争われた拒絶査定不服審判において、以下のように述べ、両商標は非類似、と判断しました。
[不服2019-6552号審決, 審決公報発行日: 2020年3月27日]
本願商標は、黒色縦長の長方形の中に、「Imitation」、「Genuine」、「Chic」、「Rudeness」、「Confusion」、「Silence」、「Gentleman」及び「Lady」の欧文字の単語を8段に横書きし(「Imitation」、「Genuine」、「Chic」、「Rudeness」、「Congusion」及び「Silence」の上部6つの単語を灰色のゴシック体で表し、「Gentleman」及び「Lady」は白抜きのゴシック体で表している。)(以下、「上部文字部分」)、その下に間隔を開けて、「Antithesis」の欧文字を灰色のゴシック体で書したものの下半分が欠けたものと思われるもの(以下、「下部文字部分」)を配してなるところ、上部文字部分と下部文字部分とは間隔が開いているとしても、いずれの語も左端を揃えて同じ書体を用いて語頭を大文字で表し、それ以外の文字を小文字で表していること、また、上部文字部分のうち上から6段目までの単語と同じ色で下部文字部分を表していることから、上部文字部分と下部文字部分は、視覚上まとまりよく一体的に表されたものと認識、把握される。
「Imitation」は「模造品」、「Genuine」は「本物の」、「Chic」は「粋な」、「Rudeness」は「無作法」、「Confusion」は「混乱」、「Silence」は「沈黙」、「Gentleman」は「紳士」、及び「Lady」は「淑女」の意味をそれぞれ有する英単語であるものの、各単語を一連に結合した全体で特定の意味合いを直ちに想起させるものではなく、上部文字部分は、その構成態様から単に英単語を縦に並べて表したものとの印象を受けるものである。
また、下部文字部分の「Antithesis」の文字は「反定立」の意味を有するドイツ語であることから、上部文字部の各単語との関連性は認められない。
そうすると、本願商標は、全体として、黒色縦長の長方形の中に9つの欧文字の単語を縦に並べて表したものとの印象を与えるものであり、いずれかの単語に着目されるといったものではない。また、その構成中、下部文字部分が取引者、需要者に対し、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められず、また、該部分以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないとも認められない。してみると、本願商標は、全体として一体のものと認識、把握され、他に、本願商標に接する取引者、需要者が、上部文字部分を捨象して、殊更その構成中の下部文字部分のみを捉えて取引に当たるというべき事情は見いだせない。
そうすると、本願商標の構成中、下部文字部分のみを分離・抽出し、その上で、本願商標と引用商標とが類似するとして、本願商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした原査定は、取消しを免れない。
後願商標に他人の先登録商標が含まれ、それが本願のように、ただ上下に並べて書いただけのものを非類似として登録を認めるのは、本願の後に出願された商標との類否において、本願商標の各欧文字を分離抽出しないことが条件でなければ、いたずらに「段書き商標」の乱発、権利範囲の拡大を招き、一商標一出願の原則に反するため、賛同しかねます。