米国:連邦巡回控訴裁「Lettuce Turnip the Beet」商標事件判決

[Newsletter vol.121]

 米国連邦第9巡回区控訴裁判所は、2021年1月20日、「LETTUCE TURNIP THE BEET」の文言がプリントされたTシャツ、トートバッグ等の需要者は、そのフレーズを見て、特定の出所と関連付けて購入するのではなく、見た目の良いデザインと認識して購入する可能性が高い、と認定しました。
[LTTB LLC v. Redbubble, Inc., 19-16464 (9th Cir. 2021)]

 米国連邦登録商標「LETTUCE TURNIP THE BEET」の正当な権利者であるLTTB LLC(以下、LTTB社)は、ネットでオンデマンド印刷ビジネスを展開するRedbubble Inc.(以下、Redbubble社)を相手取り、商品に「LETTUCE TURNIP THE BEET」のフレーズを使用する行為は、商標権侵害、模倣、間接侵害に該当するとして、訴えました。
 カリフォルニア州北部地区連邦地裁がRedbubble社の略式判決(サマリー・ジャッジメント)の申立てを認めたため、これを不服として、LTTB社が控訴したものです。

 控訴裁判所は、Redbubble社による商標「LETTUCE TURNIP THE BEET」の使用は、『このフレーズが引き立てようとする対象の使い易さや魅力を向上させる』ものであり、米国商標法第33条(b)(8)に定める「機能的な表示」に該当する。このため、本件で商標の独占使用を認めることは、『業務上の信用とは無関係に、同業他社を不利な立場に追いやるものである。』と結論付けました。

 LTTB社は、本件商標の人気度を裏付ける証拠資料として、本件商標を付したTシャツを着たミュージシャンの写真やテレビ番組の出演者の映像等を提出しましたが、控訴裁判所は、これらの証拠によって、需要者が商品の出所がLTTB社であると理解して購入したとは言い得ないと指摘しました。また、「Vuitton et Fils S.A. v. J. Young Enters., Inc. 644 F.2d 769 (9th Cir. 1981)」事件に言及し、Vuitton商標について、単に商標の見た目の美的な特徴だけに着目して購入したものではないと供述した需要者の宣誓書が提出されており、本件とは事案が異なる、と判断しました。

 以上を踏まえ、第9巡回区控訴裁判所は、LTTB社は「LETTUCE TURNIP THE BEET」商標が、商品の出所表示機能とは関係なく、美的なデザイン目的として機能しているとの認定を覆す証拠資料を提出しておらず、したがって、Redbubble社の略式判決の申立てを認めた連邦地裁の判断を支持する旨の判決を言い渡しました。
[出典:2021年1月22日付「The National Law Review」記事]


「衛生マスク」と「ファッションマスク(お洒落マスク)」

コロナ禍の影響により、昨年来、業界問わず、様々な業者が「マスク」を製造・販売しています。中には、ファッション性の高い「マスク」も数多く出回っていますが、商標登録において、従来、「マスク」は第5類の「衛生マスク」(類似群コード:01C01)に分類されていました
しかしながら、今般、弊所が受任した出願案件において、特許庁は、「ファッションマスク」及び「お洒落マスク」は、第25類(類似群コード:17A04)に属する商品として登録を認めました。機能的に衛生マスクとは呼べないけど、デザインを施した、お洒落な「マスク」を製造販売されている方は、第25類において商標登録する必要がありますので、ご留意ください。