Newsletter vol.107をリリースしました。

[日本] 知財高裁:「I♡JAPAN」は商標としての機能を果たし得ず、登録を認めず

知的財産高等裁判所は、6月17日、「I❤JAPAN」のロゴの商標登録を拒絶した特許庁の判断の妥当性が争われた審決取消訴訟において、原告(クルーズカンパニー株式会社)の主張を退け、特許庁の判断を支持する判決を言い渡しました。
[令和元年(行ケ)第10164号2019-890044号審決]

『本願商標(商願2018-49161)は,「私は,日本が大好きです。」の意味合いとして容易に理解されるものであり,日本においては,Iハート図形の横又は下に「地名」を結合した表示は,結合した当該地名が表す場所に対する愛着の気持ち等を表す表示又は当該地名が表す場所の土産物などとして客の関心をひくための表示として,また,Iハート図形の横又は下に「JAPAN」を結合した表示は,日本又はスポーツの日本代表チームなど日本に属するものに対する応援の気持ちを表す表示として,被服を取り扱う事業者やステッカーを取り扱う事業者等の事業者によって使用されていることが認められるから,本願商標をその指定商品(第14,16,18,24類)に使用した場合,本願商標に接する取引者,需要者は,これを,日本に対する愛着の気持ちや日本に属するものに対する応援の気持ちを表現したものあるいは日本の土産物を示すものと認識するにすぎないと認められる。そうすると,本願商標は,自他商品の識別力を有さないというほかない。したがって,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから,商標法3条1項6号に該当することになる。』

原告は、本願商標と同じ構成の商標を既に第25,30類の商品において登録していること、「I♡TOKYO」が昨年商標登録されたこと等を根拠に反論しましたが、裁判所は、『商標法3条1項6号該当性の判断は,個別具体的に検討,判断されるものであるから,上記の商標登録がされているからといって,本願商標に自他商品識別力があると認めることはできない。』と述べ、原告の主張を退けました。

判決全文は、こちらをご覧ください。

[米国] 連邦最高裁:「BOOKING.COM」は一般名称とは認識されず、商標登録の対象となり得る

米国連邦最高裁判所は、6月30日、「BOOKING.COM」の名称はオンライン予約サービスの一般名称(Generic word)に該当するため、米国商標法に基づき商標登録は認められないとの米国特許商標局(United States Patent and Trademark Office: USPTO)の判断の是非が争われた裁判で、9人の最高裁判事のうち、8:1の大多数評決により、「BOOKING.COM」のように、「一般名称」とトップレベルドメイン「.COM」が結合した態様からなる商標の構成においては、それによって、消費者が全体として出所を認識できる場合、最早、一般名称とは言えず、記述的商標(descriptive)と捉えて、商標登録の対象(protectable trademark)として認められるとの判決を言い渡し、UPSTOの判断を否定しました。

米国商標法は、商品やサービスの「記述的」な表示については登録の余地を認めつつも、「一般名称」は商標登録の対象外としています(U.S. law allows trademark registrations only on terms that are “descriptive,” or able to distinguish a particular product or service from others on the market. “Generic” words that refer to an entire category of goods or services cannot be protected.)。このため、USPTOは、一般名称からなる商標の場合、消費者の認識にかかわらず、法律解釈上、登録は認められないと立場を表明しました。

これに対し、裁判所は、『ドメイン名は、特定の者が所有することができるため、ドメインネームのシステムに馴染みある消費者であれば、「BOOKING.COM」が特定の事業者の出所だと推測できる』(only one entity can occupy a particular Internet domain name at a time, so ‘[a] consumer who is familiar with that aspect of the domain-name system can infer that BOOKING.COM refers to some specific entity.)こと、また、75%の消費者が「BOOKING.COM」をサービスの一般名称ではなく、ブランド名と認識している調査結果を考慮し、「BOOKING.COM」は消費者にとって、オンラインのホテル予約サービスを示す一般名称だと認識されていない以上、一般名称には該当せず、商標登録の対象と捉えられる、と判示しました。

判決全文は、こちらをご覧ください。

[日本] 商標出願統計速報(令和2年1月~4月)

特許庁が本日発表した「商標出願等統計速報」によると、令和2年1月~4月の商標出願件数は55,353件で、前年同期比:マイナス24.3%となっており、コロナ禍の影響が商標出願にも及んでいます。