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特許庁:元祖の主張を認め、公序良俗違反により、ティラミスヒーローの商標登録取消

昨年1月、シンガポールの人気ティラミス専門店「ティラミスヒーロー」の商標を日本の会社が先に日本で商標登録してしまったため、元祖が日本での出店名を「ティラミススター」に変えざるを得ない事態がネットやマスコミで報道され、当時話題となったことをご記憶の方も多いことと思います。この商標冒認事件の最近の動きを取り上げます。

特許庁は、元祖「ティラミスヒーロー」のシンガポール法人Hero Holdings Pte Ltdが申し立てた登録第6072336号商標「THE TIRAMISU HERO(図形付き)」(第29,30,35,43類)に対する一部異議申し立てを認め、以下のように述べ、商標法第4条第1項第7号違反により、第30,35,43類における登録を取り消す判断を下しました。[異議2018-900303号決定]

本件商標は、申立人らが採択して使用している、独創的な特徴を有する手書き風の「THE TIRAMISU HERO」の欧文字及びその上部に配された猫図形から構成される引用商標とほぼ同一又は酷似する。申立人らは、シンガポールにおいて、2013年7月に申立人商品を提供する「The Tiramisu Hero Cafe」を開始し、我が国においては、2013年8月から申立人商品の販売を開始したことがうかがわれ、遅くとも、2014年1月から百貨店の期間限定の催事に出店を開始し、その後も、継続的に期間限定の催事に出店している。そして、引用商標は、株式会社ティラミスヒーロージャパンのウェブサイトに、2013年7月から表示され、上記百貨店等の期間限定の催事への出店記事において引用商標が表示され、また、当該催事のポスター等や広告チラシにおいて、引用商標が表示されたことが認められるところ、いずれも本件商標の登録出願前である。本件商標は、その指定商品及び指定役務中に、「ティラミス」を含む第30類に属する商品並びに「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び「菓子・パンを主とする飲食物の提供,飲食物の提供」を含む第35類及び第43類に属する役務を指定役務とするものであり、申立人商品と同一の「ティラミス」を含む食品及び飲食物に関連する商品及び役務を指定商品及び指定役務に含む。

上記によれば、申立人商品が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、すでに我が国において、シンガポールからきた人気商品であることを宣伝文句として、百貨店等の催事において販売されていたこと、及び申立人商品が雑誌において人気商品として紹介され、テレビにおいても紹介されたこともうかがえることから、申立人商品は、我が国においてある程度知られていたものといえる。そして、本件商標は、引用商標とほぼ同一又は酷似するといえるものであり、商標権者が引用商標を知り得ることなく、両者が偶然に一致したとは想定し難く、むしろ、引用商標が株式会社ティラミスヒーロージャパンのウェブサイト、催事に関するウェブサイト記事、ポスターやチラシ等において表示されていたことからすれば、引用商標は、何人も容易に知り得る状況にあったものといえることから、商標権者は、引用商標の存在を知った上で、これが商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、不正な目的をもってひょう窃的に出願したものと優に推認できるものである。

このような行為に係る本件商標は、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」に該当する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

原則、商標は早く出願した者勝ちですが、公正な競争秩序を保つための商標法の本来の姿に照らせば、登録を取り消した特許庁の判断は、結論として妥当と思いますが、申立人が商標法第4条第1項第10号や15号違反を主張していたことからすれば、上記の事実認定をもって7号に該当するとの法的構成については、4条の解釈からして些か疑問に感じます。

上記取消決定の後、申立人は、今年に入り、本件商標権者が所有する登録第6031954号商標「ティラミスヒーロー」に対しても無効審判を請求しており、ティラミスヒーロー商標騒動は、無事終息に向かいつつあるようです。